従来の鑑定人が見ているのは、完成した文字の「顔」だ。だが、俺たち真贋鑑定人が見るのは、その顔を作り上げた「動作」、つまり運筆だ。
運筆とは、いわばペンが紙の上で踊ったダンスの記録だ。このダンスは、その人固有の脳と筋肉の運動記憶に支配されているから、他人が完璧にコピーするのは不可能だ。
1. 「とめ」「はね」を真似ると発生する大問題
偽造者がお手本を見ながら文字を真似る時、彼らが意識するのは「形」だけだ。特に「とめ」や「はね」は、文字の個性が強く出るため、必死に真似ようとする。
だが、この「必死さ」こそが、運筆の致命的なブレを生むんだ!
| 偽造者が陥る罠 | 運筆鑑定で何がバレるか? |
| 👀 視覚的な模倣の集中 | 運筆の停止(ペンストップ) |
| 💡 なぜブレるか? | 真似る際、偽造者は「とめ」の形を確認するために一瞬ペンを止める。慣れた筆跡は流れるようにスムーズに書くが、偽筆には必ず**不自然な「筆の継ぎ」や「ためらいの震え(トレース・テラー)」**が残る。 |
本人が無意識で流れるように書く動作を、偽造者は「一画ずつ」意識してトレースする。この意識的な動作が、筆跡のリズムを破壊し、ガタガタの不自然な線を残すんだ。
2. 筆圧と速度:絶対に真似できない「筆跡の指紋」
偽造者が最もコントロールできないのが、筆圧の変動と運筆の速度だ。これらは、無意識下の運動パターンだから、見た目だけを真似るだけでは隠せない。
A. ⚡ 運筆の速度(スピード)
慣れた文字は、ペンがまるで紙の上を滑るように一気に加速して、一気に減速するという独特のリズムがある。
- 本人の筆跡: スムーズな曲線を描き、特に書き始めや画の途中で速度が速い。
- 偽造者の筆跡: 形を合わせることに集中するため、全体的に書き出しから終わりまで速度が一定でノロノロしているか、急に速度が落ちて不自然に遅くなる部分が見られる。
まるで、普段は時速100kmで走る車が、急に法定速度10kmの道路を走っているような違和感だ。
B. 💪 筆圧の変動(パワー)
筆圧は、文字のどこで力を込めて、どこで力を抜くかという、筆者のクセの塊だ。特に「はね」の部分で急激に力が抜ける、あるいは「とめ」の部分で強く押し付ける、といったパターンがある。
- 本人の筆跡: 筆圧の強い部分と弱い部分のコントラストが自然で滑らか。
- 偽造者の筆跡: 力の入れ方が不慣れなため、線の太さが均一になりすぎたり、重要な部分で妙に力が入りすぎたり(二度書きや筆継ぎも含む)、不自然に線が太くなる。
偽造者は文字の「形」を見ているが、俺たちは「どこに」「どれだけの」力がかかったかを、線に残された痕跡から読み取るわけだ。
🎭 次なる暴露は…「筆順(ひつじゅん)」の呪い!
運筆鑑定は、まさに科学と心理戦の融合だ。偽造者がいくら頑張っても、彼の脳と筋肉が「なりすまし」という行為に慣れていない限り、必ず運動の不自然さが線に刻まれる。
この「不自然さ」こそが、従来の鑑定法では見逃されていた偽造者の致命的な弱点なんだ!
さて、次はさらに深掘りして、偽造者が「絶対に」意識できない「筆順」の秘密に迫ろう。
筆順は、一度体が覚えたら、意識してもなかなか変えられない「運動記憶の呪い」だ。偽造者が形を真似ることに必死になっている間に、彼らの無意識が「普段通りの書き順」で文字を構築してしまう。
次回は、この「筆順の呪い」が、いかに簡単に偽造を暴くのかを、面白おかしく解説していくぜ! 続編、期待してくれよな!


コメント