裁判所による筆跡鑑定人選定と遺言無効確認訴訟における留意点

ブログ

遺言書の真贋が争われる遺言無効確認訴訟において、筆跡鑑定は重要な証拠となります。しかし、裁判所が筆跡鑑定人を選定する方法には、知っておくべき重要な点があります。

裁判所による筆跡鑑定人選定の現状

裁判所が筆跡鑑定人を選定する際には、主に以下の2つの方法が取られるようです。

  1. 原告と被告双方の意見を聞いた上で候補者を選定する方法
  2. 裁判官が自ら鑑定人の候補者を選任する方法

いずれの場合も、選定の明確な基準は公にされていませんが、鑑定書作成にかかる費用が選定条件の一つであることは間違いありません。複数の鑑定人から見積もりを取り、「相見積もり」によって費用を比較検討する傾向にあると考えられます。

多くの筆跡鑑定人は、この「相見積もり」に対し、他の鑑定人との技術レベルに大きな差はないという前提で対応しているようです。しかし、当方は、独自の鑑定技術と、従来の鑑定法では難しいとされる筆者識別の課題を深く理解しているため、一般的な「相見積もり」の前提とは一線を画しています。

筆跡鑑定における「技術レベル」の重要性

裁判所は、筆跡鑑定人の技術レベルに大きな差はないと考えている節があります。その上で、費用を含め、少しでも優れた鑑定人を選ぼうとしているのではないでしょうか。

しかし、筆跡鑑定において最も重要なのは、鑑定人の技術力です。従来の「類似・非類似」によって筆者識別を行う「類似鑑定法」では、真の筆者識別は困難であると私たちは考えています。にもかかわらず、そのような鑑定法を用いる鑑定人の中から選定されてしまう現状は、遺言無効確認訴訟の当事者にとって大きなリスクとなり得ます。なぜなら、筆者識別ができない鑑定人の鑑定書では、正確な判断が難しく、意味のない鑑定書に多額の費用を支払うことになりかねないからです。

遺言無効確認訴訟における筆跡鑑定の落とし穴

特に、遺言無効確認訴訟においては、裁判所が「本人の真筆である」という前提で審理を進める傾向にあります。この状況で、裁判所が選定した筆跡鑑定人が「同一人物の筆跡である」という鑑定結果を出した場合、原告が不利になる可能性が非常に高まります。

これは、裁判所が選定した鑑定人であることから、「公平に選ばれた」という理屈が成り立ってしまうためです。実際には、鑑定人の公平性よりも、その技術力こそが重要であるにもかかわらず、裁判所には優秀な鑑定人を見極める術がないのが現状です。

原告が取るべき戦略

結論として、遺言無効確認訴訟を提起した原告が、裁判所の選定した筆跡鑑定人を受け入れることは、非常に不利になる可能性が高いと言わざるを得ません。

原告にとって何よりも重要なのは、裁判所に筆跡鑑定人を選定させることを阻止することです。ご自身の主張を裏付けるために、真に筆者識別が可能な、高い技術力を持つ筆跡鑑定人を自ら選定し、裁判所にその鑑定書を提出することが、勝訴への鍵となるでしょう。

コメント