筆跡鑑定の核心：なぜ「書き癖」だけが真実を語るのか？

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2024.09.242025.07.08

筆跡鑑定の依頼書や報告書を読むと、驚くべきことに、ほとんどの鑑定人が筆跡の「特徴」と「筆跡個性（書き癖）」を同一視しているようです。残念ながら、このような基本的な違いさえ理解せずに鑑定を行っている現状では、筆跡鑑定の信用性が低下するのも無理はありません。

「特徴」と「書き癖」の違いを理解しない鑑定人たち

多くの鑑定人は、書くたびに変化が大きい単なる「特徴」ですら比較対象とし、「個人内変動が大きい」といった頓珍漢なことを言っています。筆跡には、書くたびに大きく変化する単なる「特徴」と、変化しにくい「筆跡個性（＝書き癖）」の両方が存在することを知らないのです。

私の提唱する脳科学的筆跡鑑定法では、このような都度変化する特徴を精緻に調査しても筆者識別ができないことを知っています。そのため、変化の少ない「筆跡個性」のみを指摘箇所とするのです。当たり前ですが、変化しにくい筆跡個性だからこそ比較が可能となるのです。だからこそ、筆跡鑑定をダメにしている「個人内変動」という馬鹿げた用語を使う必要がないのです。

酷似した偽造筆跡を見破る「脳科学的筆跡鑑定法」の実力

下の図をご覧ください。対照資料と鑑定資料は酷似しています。しかし、鑑定資料は私が書いた偽造筆跡です。私に限らず、この程度に書ける才能のある人は大勢います。

従来の筆跡の形状だけで判断すれば、これらは「同一人の筆跡」とされてしまうでしょう。彼らの鑑定書には、偽造の筆跡の特徴として、画線の揺れや停滞、抑揚のなさや張りの弱さなどが書かれています。しかし、模倣の達人はそのような「へま」はしません。筆跡の類似性だけで筆者識別をしようとするから、真の筆者識別ができないのです。

しかし、脳科学的筆跡鑑定法であれば、この筆跡が偽造であると容易に暴くことができます。それでは、その実力を公開いたしましょう。

まず、本人筆跡（対照資料）から恒常的に出現している本人の「書き癖」を特定します。皆さん、大木順子さんの書き癖がどこかわかりますか？そうです、第1画と第2画を連続して書く書き癖がありますね。分かった方は、半分正解です。なぜ半分かというと、このような分かりやすい特徴は、偽造者であれば模倣する確率が非常に高いため、ここを指摘しても偽造を見破れない可能性があるからです。

そこで、私が特定する「書き癖」は以下の2点です。

❶第3画と第4画の短い横画をご覧ください。大木順子さんの筆跡すべてに、これらの画の終筆部がわずかに垂れているのが分かります。この筆跡は運動癖が可視化されたものであり、大木順子さんはこの画の終筆部を書くときに、手首を下に捻るという運動癖があるのです。
❷「口」の第1画の縦画の起筆部が、ひらがなの「く」のように曲がっているのが分かります。当然、これは書き癖なので恒常的に出現しています。大木順子さんは、「口」部の縦画を書き始めるときに「少し右から転折するように書く」という運動の癖があるのです。

それでは、鑑定資料を見てみましょう。脳科学的筆跡鑑定法は、本人筆跡から特定された「書き癖」が鑑定資料に出現しているかを見るだけなのです。するとどうでしょう。本人が書くときに必ず出現していた書き癖が一つも出現していません。お分かりの通り、これは本人の運動癖を持たない人が書いた筆跡、つまり「別人の筆跡」ということが簡単に分かりました。

「その箇所が違うと思った」という方も少なからずいらっしゃると思います。当研究所にお越しいただいた方に同じように問いかけても、およそ2割くらいの人が指摘できます。しかしながら、これは筆跡を何十倍にも拡大したものであり、拡大しなければ一般の方ではほとんど見分けがつかず、特定できません。

私は、このように拡大して初めて分かるような、**模倣が極めて困難な「書き癖」**を数多く指摘していきます。それが鑑定資料に出現しているかどうかを見れば、偽造は容易に見抜けるというわけです。