筆跡鑑定で闘う相手は裁判所である

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先日,依頼人の方からメールをいただいた。「遺言執行の停止仮処分命令申し立て」の判決がでて,棄却されたとのことである。

筆跡鑑定書を提出しているので,それに対する筆跡部分のみを判決文より抜粋した。

❶には「筆跡の鑑定は,科学的な検証を経ていないという性質上,その証明力には疑問な点が多い」とある。

これについては,このような判決文が出てくるという想定内であったので,私の作成した鑑定書には次の解説をしている。

このことに対しては,何ら意見されていない。筆跡鑑定が科学の分野であるにもかかわらず,相変わらず判例に強く拘束され続けている。さらに,❷には「いわゆる伝統的な筆跡鑑定法に基づかない」とある。この主張があることも想定の範囲であり,私の作成した鑑定書には以下の記載がある。

伝統的筆跡鑑定法では,筆者識別はできないのである。これが嘘なら,私は筆跡鑑定人を即刻辞する覚悟である。こんな体たらくなことがまかり通っているから,善良な方が報われず偽造者があざ笑っているのだ。本当に,いい加減にしてもらいたいものである。さらには❸では「独自の鑑定法に基づくものとされているが,その基礎となる科学的原理が理論的正確性を有していると認めるに足る疎明資料は見当たらない」 当然,これも想定内であり,私の鑑定書には次の記載がある。司法は,脳科学までも否定するというとんでもない暴挙に出ているのだ。

お分かりの通り,私の書いた筆跡鑑定書等全く読まれていないということだ。根拠の記載のない鑑定書は裁判用に使用できないと言って依頼人に高額負担をさせながら,読まないとは何事かと言いたい。

科学の世界では常識が科学の発展の邪魔をする。司法の世界では過去の判例が常識となる。まさに水と油である。したがって,司法の評価が科学よりも優っている筆跡鑑定は、判例という常識が重要視され、常識から逸脱する新たな研究に基づく理論はスルーされることになる。つまり、古い常識はいつまで経っても消えることはない。半世紀以上前の判例が未だに根強く残っていることがそれを証明している。科学の世界ではありえない事がおこっている。残念ながら、筆跡鑑定の未来はないことになる。

ふざけた判決が,どんどんと善良な方の財産をむしばんでいく。そして,長年積み上げてきた研究成果を,聞きかじった程度の筆跡鑑定の知識と的外れな主張によって一瞬にして闇に葬られる現実がある。「これでいいのか司法!」という怒りがこみあげてくる毎日である。

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