某鑑定所のホームページには以下が書かれている。
個人内変動の観察というリード文に「筆跡鑑定をする際,筆跡のどの部分に個人内変動が出ているかしっかりと調べます」
???…何を言っているのかさっぱりわからない。その理由は「個人内変動とは何ぞ」ということから解説すると分かり易い。筆跡は人が書くものであるからスタンプのようにピタリと一致するものではなく必ずブレが生じる。そのブレやブレ幅の事を「個人内変動」という。つまり「どの部分に個人内変動が出ているか」というのは明らかな誤りであり,個人内変動はあらゆる箇所に出現するものであるから,この文章は「何を言っているのか不明」となる。まさか「個人内変動」という意味すら知らずに書いているのであろうか?
更に,個人内変動が出ているかを調べたところで,筆者識別が可能となることとは全く無関係であり,その根拠すら存在しない。
低レベルな記述に対する意見はこれくらいにするが,残念なことに多くの筆跡鑑定人が「個人内変動(ブレ)を分析して,筆者が同一であるか別人であるかを判断する」と嘘八百を並べたてるので,「googleのAIによる概要」にまで誤った記載がされてしまった。以下,その引用。
筆跡鑑定とは、筆跡の「書きぐせ」や「ブレ」を分析して、筆者が同一であるか別人であるかを判断する鑑定手法です。本人特定や被疑者の割り出しなどに利用されます。
【筆跡鑑定の手順】
- 鑑定したい資料と、対象者本人が記載したことが明らかな資料を複数用意する
- 同じ文字同士を比較する
- 筆跡に現れる「書きぐせ」や「ブレ」を分析する
- 筆者不明の筆跡と比較して、同じ筆者か異なった筆者かを識別する
その誤りを詳細に解説するので,以下をご覧いただきたい。

青枠の対照資料は本人筆跡である。例えば,鑑定資料のaの突出の長さは資料B群に比べて長い。また,bの角度も資料B群の角度に比べ緩い角度で書かれている。
この両資料の長や角度の違いが,個人内変動なのかそれとも偽造された故の相違なのかわかる術はない。それが分かるという馬鹿げた根拠を解説しよう。
⑴ 画線の長さや角度を調査する場合

選択された対照資料(B1,B2,B3,B4 ,B5)に現れている筆跡特徴から,その特徴の変動幅の範囲を見出し,鑑定資料Aの同一箇所がその範囲(長さや角度)に収まっているかを調査する手法。 (具体例:鑑定資料Aの第1画の長さは対照資料のB4の短い長さと類似する)なんと,冗談ではなく本気で言っているのであるからびっくり仰天だ。こんな手法を採れば,圧倒的に同一人の筆跡と判断されるのであるから,彼らの鑑定所のほとんどは「同一人の筆跡」という鑑定結果となる。
⑵ 形状の類似性を調査する場合

選択された対照資料(B1,B2,B3,B4,B5 )に現れている起筆部や終筆部の形状,またはその他の形状と類似性を調査する手法。この場合,選択された鑑定資料Aの筆跡特徴の形状が,対照資料のB1,B2,B3,B4 ,B5の中のいずれかの特徴に類似性が見られれば同筆要素となる。(具体例:鑑定資料Aの第2画の終筆部がたまたま標準とは逆方向に運筆された対照資料のB5と類似する)
上述(①②)のように,鑑定資料の特徴が,対照資料の内のいずれかに一致または類似が見られれば同筆要素となるという科学的根拠等あるはずがない。対照資料が数多くあれば,その中には「たまたま一致したものや類似したもの」があるのは当然である。つまり対照資料の数の多さによって,鑑定結果が変わるという馬鹿げた鑑定法ということだ。
恐ろしいことに,ほとんどの鑑定人はこんな簡単なことすら疑問を抱かずに鑑定を行っているのだ。T鑑定所に至っては「客観的な根拠を示すことができ」と書いてあるが,肝心のその具体的手法の明示はない。
反論があるというのであれば,「googleのAIによる概要」に書いてある「個人内変動(ブレ)を分析して,筆者が同一であるか別人であるかを判断する」という具体的手法を明示するか,さもなければ公開試験に参加し実力を見せつけるがよい。「個人内変動を分析し筆者識別ができる」ことを証明できる鑑定人は皆無であろう。なぜなら,そんなことは100%できないからである。多くの鑑定人が,一般の人々が分からないことをいいことに,嘘八百を並べたてている。このように,鑑定人の言うことを真に受けてはいけない。何度も言うが,筆跡鑑定業界は腐りきっているのである。

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