筆跡鑑定とは

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googleのAIにはこう書かれています。

筆跡鑑定とは、筆跡の特徴を解析して,誰が書いたのかを特定する鑑定です。遺言書や契約書、領収証などの筆跡鑑定が可能です。

またウィキペディア(Wikipedia)には,こう書かれています。

筆跡鑑定(ひっせきかんてい)とは、鑑定の一種で、複数の筆跡を比較し、それを書いた筆者が同一人であるか別人であるかを識別するものである。筆跡の鑑定は、筆跡に現れる個人内の恒常性と希少性の存在を識別する事によって成立する。

即ち,これまでの筆跡鑑定の概念は上記に書かれているように「筆跡の特徴という形状を比較」するものでした。

ところが,偽造者は似せて書くのが下手な人もいれば,他人の筆跡を似せて書くのは朝飯前という強者も存在します。そういう私も,他人の筆跡を真似て書くことなど容易であると思っている一人です。他人の筆跡を瓜二つに書ける者は多く存在しています。よって,筆跡特徴や形状の類似性で筆者識別を行うことはできないのです。

私が鑑定手法としている「脳科学的筆跡鑑定法」は従来の筆跡鑑定とは,この考えが全く異なります。

これには,以下の2つの科学的根拠をしっかりと理解することが重要です。

❶書字が「手続き記憶」に大きく関与していること

❷「手続き記憶」という概念を理解していること

「手続き記憶」は,簡単に言うと運動の記憶です。書字がどうして運動の記憶と関係があるのでしょう?書字が行えるプロセスを分析してみましょう。文字を書くときに,私たちは必ず手を動かして書きます。筆跡を分析すると,手の運動全体の動きの中で筆記用具と用紙が接した一部であるといえます。要約すれば,「筆跡とは手の運動動作の軌跡の一部」なのです。書字が可能となるのは頭の中の文字のイメージ画像を写し書いているのではなく,個々人の手の運動の軌道を記憶しているのです。その証拠として,皆さんが「田」の文字を書くときに第3画目を縦画から書くか横画から書くか思い出してみてください。おそらく,思い出せないので空で書いていることでしょう。すると,初めて自分が横画や縦画から書いていることに気づくはずです。先述したイメージ画像を写し書いているのであれば筆順は存在しませんから,この仮説は誤りであることになります。ここで述べたように「手続き記憶」は運動の記憶であること,もう一つは無自覚性があることが筆跡鑑定を成立させるうえで重要な科学的根拠となります。

この記憶の形成について述べてみたいと思います。「手続き記憶」の形成は,意識された繰り返しの運動を一定程度を行うと,その運動が無自覚で行える「手続き記憶」に移行されます。漢字ドリルで何度も繰り返し練習したことや,ブラインドタッチができるまでは「P」「M」のキーはどこにあるのか分からず,面倒と思いながらも何度も練習したはずです。その甲斐があって手続記憶に移行しブラインドタッチができるし文字が書けるのです。身近でいえば,ピアノ演奏,車の運転,箸の持ち方,ゴルフのスイングなどは全て手続き記憶によるもので,繰り返しの練習によって習得されたものです。例えば,ピアノの演奏は意識しながら鍵盤と音符をにらめっこしていたのでは卓越した演奏はできません。無自覚性があるからこそ卓越した演奏ができるし文字もスラスラと書けるのです。

上記の「田」の筆順のように,第3画目を横画から書く人の運動軌道は無自覚であるのにも関わらず,必ず横画から書く手の運動軌道となります。誤字や旧字もそのように書く運動軌道が形成されていることから何度書いても誤字や旧字という再現性を持つのです。

即ち,筆跡鑑定とは筆跡の特徴という形によって筆者識別するものではなく

人の固有の運動軌道やその中に出現する運動癖の一致,不一致から筆者識別をすること

なのです。この運動軌道が標準と逸脱する書き方や軌道の中に現れる固有の運動癖は,書き癖となって必ず可視化されます。

つまり,筆跡鑑定とは特徴やその形状の比較ではなく,固有の運動軌道や運動癖が可視化された書き癖を分析し,その相違によって筆者識別を行う手法と言えます。

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