筆跡鑑定が進化しない理由❷

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伝統的筆跡鑑定法では,筆跡鑑定が100%出来ないと何度もこのブログに書いてきた。この仕事を始めて14年間,朝から晩まで筆跡鑑定の研究・検証を病的と思えるくらい頭から離れず没頭してきた鑑定オタクが言うのだから間違いない。

一方では,この長い年月の間に善良な方が筆跡裁判で奈落の底に落ちていったことも何度も目にしてきた。どこかの筆跡鑑定人のホームページに「鑑定に向いている性格」というリード文の中に「自信過剰でない人」と書いてある。自信過剰な鑑定人と鑑定結果に確信がある鑑定人の区別をどうつけるのかということもあるが,あなたは自身が過剰なくらい自信がなく鑑定を行っているのであれば鑑定人を辞した方がよい。他人の人生を狂わせる可能性があるからだ。更には,このように筆跡鑑定で悲惨な目に合われた方の気持ちが分かっているのであろうかと問いたい。鑑定結果で,自信のないものを提供する鑑定人のほうがよほど「鑑定人に向いていない」と思うのであるが,皆さんはどのように思われるのであろうか。

現在もなお,Yahoo!やgoogleで「筆跡鑑定」と検索すると,その上位の鑑定事務所や関連企業のホームページには「筆跡の個人内変動を分析する科学的な鑑定」「配置・筆圧・筆順・偽筆の4つに注意をしながら鑑定を進める」「記載時期は10年まで鑑定が可能」などと言った大嘘が沢山書かれている。レベルが低い業界であるので誰も誤りであることすら気が付かない。

更に,ある弁護士事務所のホームページには「顕微鏡・マイクロスコープ・筆圧検出器・専用の筆跡鑑定ソフト,重回帰分析・多変量解析などの統計学や数学に基づく科学的な鑑定手法が裁判に重視される」と書いてある。こんなことがまかり通っては大変なことになるのだ。裁判所のすべてがそのように判断している訳でもなく,また弁護士の方が筆跡鑑定の事を何一つ理解されていないことが手に取るようにわかる事例である。筆跡が争点となる遺言無効確認訴訟の弁護をされるのであれば勉強が足りないといわざるを得ない。

一向に「伝統的筆跡鑑定法」や「計測的筆跡鑑定法」が筆者識別が不可能な筆跡鑑定法であると認知されていない。コペルニクスが1543年に地動説を提唱したが,それでもなお天動説が支持され続けてきた。人の固定観念というものはそうそうに変えられないものである。したがって,いくら真っ当な理論で「伝統的筆跡鑑定法」やそれに類する「計測的鑑定法」では筆跡鑑定は出来ないと言い続けても周知されるのはまだまだ先のようである。

そんな中,偽造遺言書や偽造養子縁組,偽造遺産分割書はますます増え続けている。司法が「筆跡鑑定の証拠能力は低い」といっているから,偽造者は「そうなのか,筆跡鑑定の証拠能力は低いのか!」という自信のもと偽造文書を作成することに躊躇いはない。

この状況が続いてしまうのは,裁判所が筆跡鑑定を軽視していることを吹聴しているからであり,残念極まりない。

しかしながら,私はあきらめない。なぜなら,筆跡鑑定に人生を捧げた頭のおかしな鑑定人だからこそわかるものがある。また,これまで奈落の底に落とされた依頼人の後ろ姿を二度と見たくないという強い思いもある。

「今の筆跡鑑定はおかしい,裁判所の判例は間違っている」と思われている一般の方,筆跡鑑定で悩まれている善良な方を救って差し上げたい弁護士の方,一緒に闘っていこうではありませんか。私は,残りの人生をかけて脳科学的筆跡鑑定法を主流な鑑定法となることを目指し実現していく所存である。腐りきっている筆跡鑑定業界を何としても正していきたい。

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