前回のブログに,”Ýahoo!やgoogleで「筆跡鑑定」と検索すると,その上位に「筆跡の個人内変動を分析する科学的な鑑定」「配置・筆圧・筆順・偽筆の4つに注意をしながら鑑定を進める」「記載時期は10年まで鑑定が可能」などと言った大嘘が沢山書かれている。”と書いた。
これが大嘘である根拠を述べてみたい。まず,最初の「筆跡の個人内変動を分析する科学的な鑑定」についてであるが,このことは知ったかぶりの鑑定人…❶個人内変動を分析という嘘を参照願いたい。
次の「配置・筆圧・筆順・偽筆の4つに注意をしながら鑑定を進める」とある。ここで注意すべきは「4つに注意しながら鑑定を進める」という記述だ。配置,筆順などに注意を払いながら鑑定を行うことは間違いではないが,筆圧と偽筆は大嘘である。前者の筆圧で筆者識別ができる例を挙げれば,衰弱の著しい高齢者の筆跡は筆圧は弱々しくなる。もし強い筆圧で書かれていれば合理性に欠け異筆要素となる。また,払う運筆は次第に筆圧が薄くなるので止める運筆ということが分かる。つまり,筆圧からわかるものといえばこの程度なのである。なぜなら,筆圧は何グラムの圧で書いているということが分からないからである。たとえ,計測できたとしても以下の理由で異同判断ができる根拠はない。
❶まずは「筆圧の調査」について述べてみたい。筆圧は「一」の文字さえ,起筆部の筆圧,送筆部の筆圧,終筆部の筆圧が異なる。問題は「どの箇所の筆圧を比較すればよいのか」ということである。漢字一文字ですら数十か所あり,ましてや画数の多い文字では100以上の調査が必要だ。それを10文字調査するとなれば調査箇所はおよそ500箇所以上にも及ぶ。更には,その筆圧がありふれた筆圧なのか,希少性の高い筆圧なのかを統計的に判断する膨大な筆圧データベースが必須となる。即ち,このデータベースすらないのに,筆圧から筆者識別等できやしないのである。それに加え,ボールペン,フェルトペン,毛筆,鉛筆など筆記用具や,書いた姿勢,その時々の感情,疲労度によっても変化する可能性が高い。さらには,インク成分による色の濃さやペン先の太さ,つまり太字,細字,鉛筆やシャープペンではB,Hなどの芯のかたさ,濃さの違うものが沢山ある。鑑定資料が強い筆圧,対照資料は非常に弱弱しい筆圧で書かれていれば分からないでもないが,そのような資料はごくごく稀である。これまで,筆圧から正しい理論で異同判断をされている鑑定書を見たことがない。どうやって筆圧で異同判断ができるのか不思議でならない。つまり,大嘘なのである。
❷次に「偽筆の調査」について述べてみたい。多くの鑑定書に書いてあることはこういうことだ。「偽筆であれば,模倣するために書字スピードが遅くなるため,画線の揺れが生じたり画線の張りが弱くなる。また,筆継ぎや加筆など不自然な運筆の出現するから偽筆と判断する出来る」とある。多くの鑑定人はこんな低レベルだから,バカも休み休み言えと言いたくもなる。以前このブログで書いたおごり高ぶる裁判を参照いただきたい(下図に再掲載)。鑑定資料❶❷は偽造筆跡である。「画線の揺れが生じたり画線の張りが弱くなる。また,筆継ぎや加筆など不自然な運筆の出現」があるかと問いたい。その答えは「ない」である。巧妙に偽造筆跡を書ける人は山ほどいるのだ。こんなことも分からずに,何が偽筆の調査なのかと言いたい。偽造かどうかは多数の書き癖の比較調査を行い,その結果として最終的に判断するものである。こんな当たり前のことすら分らない。残念ながら,このような大噓の記述がÝahoo!やgoogleで「筆跡鑑定」と検索した時に上位に出てくるのである。こんなことだから筆跡鑑定は進歩しないばかりでなく危険であるといっているのだ。

最後の「記載時期は10年まで鑑定が可能」については,当ブログ知ったかぶりの鑑定人‥❺記載時期の乖離は10年以内という嘘を参照願いたい。大嘘であることが分かるであろう。
筆跡鑑定は他の科学の分野と違い学問が存在しない。大学に筆跡鑑定に関する学部も存在しない。研究している所と言えば,唯一科学警察研究所くらいだ。ここも全く頼りにならないことは前のブログに書いた通りである。よって,筆跡鑑定の定説や常識は科学的根拠の乏しいものが多い。私のような鑑定オタクが日夜研究,検証を重ね正しい理論を唱えても,Ýahoo!やgoogleの検索では世に浸透している間違った通説や常識が正しいものとして検索上位に掲載されることが悔しくて仕方ない。根拠のある理論よりも,大勢の鑑定人の書いている大嘘の方が正しいと判断されることが残念なのである。きっと,私が他社を誹謗中傷をしているとでも思っているのであろう。このままでは,筆跡鑑定が非常に危険であるといっているだけである。

他社の誹謗中傷ではない理由をあげれば,当職は筆跡鑑定に関する証人の出廷数では8案件の実績がある。法廷で証言している数でいえば鑑定人の中でも最多であると思う。法廷で嘘を証言すれば偽証罪に問われる。当然のことながら,上記の記載事項は様々な裁判所で述べていることであり,その内容が嘘であるという疑問を持たれたことはない。また,150件以上の弁護士事務所へ訪問し,これらの理論を解説して回ったが,これに対し異論を述べた弁護士の方はいない。司法関係者からの異論のでない鑑定手法よりも,根拠の破綻している鑑定法が優越されることがあってはならないのである。今まさに,このことで多くの方が苦しんでいるのだ。どんなに非難されようが,善良な方が筆跡鑑定によって救われる日が来るまで闘い続けたい。
コメント