計測的方法とは,伝統的筆跡鑑定方法と根本的な考え方が同じです。分かり易くいうと,鑑定資料と対照資料の筆跡特徴である画の長さや角度,面積,終筆部の形状を比較検討し,筆者識別をするというロジックの根幹が同じということになります。

計測的鑑定法で筆者識別が出来ない根拠の解説
❶ 偽造者には,なりすましの筆跡をうまく書けない人(下手な人)と巧妙な成りすましを書ける人(達人)が存在します。なりすましの巧拙は人様々です。この手法は模倣下手な人が書いた筆跡は偽造と見抜くことが可能かもしれませんが,達人が書いた偽造筆跡は100%見抜くことができません。例えば,私が書いたなりすましの筆跡は,100%見抜けることができないという確信があります(下図右鑑定資料❷)。異論があれば,私が実験台になって証明いたしますのでお申し付けください。。

❷コンピュータによる数値解析した数値によって筆跡の異同判断をするのだといいいます。人の主観が入らない数学という学問の公式を活用しているから科学的とも言っています。こう聞くと,科学的で理屈に合った理想の鑑定法のように聞こえます。しかしながら,この計測法による計測で正しい計測が行えるのかと問えばそんなことはありません。なぜなら,客観性のあるエビデンスが存在しないからです(❹参照)。あるとすれば,「学会に筆跡鑑定の手法の論文を提出し,それが学会員・査読者・編集委員の評価を得ている」という何の根拠にもならないものです(当ブログ「裸の王様」参照)。
❸数値解析による計測的手法は,「計測」という言葉が入っているように数量的状態を測ることです。つまり,根幹が伝統的筆跡鑑定法と同じ類似鑑定法でありながら,その計測の仕方のみを変えただけなのに「客観性のあるコンピュータ解析」と謳い,あたかも最新鋭の科学的鑑定法であるというイメージを作り上げているのです。筆跡鑑定で最も重要なことは,客観性ではなく正答率であることすら分かっていないようです。

❹数値解析から得られた数値による計測が,正しいものであるか否かは検証されていません。例えば,「人の書いた文字は大小様々あるので,これを同じ大きさに揃えてから計測する」という理想的なことをいっていますが,本当に様々な大きさの筆跡を同じ大きさに揃えることができるのでしょうか。「同じ筆跡の大きさ」という本来定義も存在しないものを勝手に数値化し,それをなぜ同じ大きさと言い切れるのか不明です。科学を標ぼうしながら,中身は科学とは程遠い「身勝手な屁理屈」と言わざるを得ません。
結論をいえば,鑑定手法の根幹となるものは伝統的筆跡鑑定と全く同じで何ら変わりありません。繰り返し述べているように伝統的筆跡鑑定法では筆跡鑑定ができないのです。鑑定ができない鑑定法を計測の仕方だけを変えたところで筆跡鑑定ができないことには変わりありません。また,計測方法にエビデンスすらないもの(上記❹参照)を科学的な鑑定と言っていることもまさに誇大広告と言えるでしょう。この手法を伝統的鑑定法とわざわざ分けて,筆跡鑑定法には「伝統的筆跡鑑定法」「計測的方法」「科学的方法」の3つがある」と言っているのは,この業者の勝手な主張であり事実とは異なります。これを真に受け拡散させる弁護士もいるので筆跡鑑定が誤解される元となっています。この業界が腐りきっていることの証です。次回は「科学的方法(鑑定法)」について解説したいと思います。
コメント