日本の筆跡鑑定が世界をリードできる理由

ブログ

「サイン文化のアメリカは,日本よりも筆跡鑑定の技術が進んでいるのでは」と思われている方が多いかもしれません。あるホームページには,アメリカの「ドーバート基準」が鑑定人の選択基準と謳っていますが,それはあくまで考え方の一つです。私はこの記事を読んで,日本よりもアメリカの筆跡鑑定の技術の方が長けているという「アメリカかぶれ」が垣間見れて非常に残念に思います。というのも,以下のように筆跡鑑定が出来る土壌が大きく違うことから,日本独自の鑑定人の選択基準をつくればよいのです。

私は筆跡鑑定の証人として,米カリフォルニア裁判所に行ったことがります。日本の裁判とは異なり,裁判官の隣の席で約2時間,筆跡鑑定結果の根拠の解説をした経験です。

もちろん,「ドーバート基準」という言葉は聞いたことがありますので,アメリカの裁判所がこの基準を持ち出して反論してくることも想定したうえでの証人出廷でしたが,「ドーバート基準」がそれほど重視されていないと感じました。なぜなら,それについての言及など一切なかったのです。また,筆跡鑑定の技術が高いと思いきや,日本とさほど変わらない低レベルな鑑定技術であることを肌で感じました。

「日本よりもアメリカの方が筆跡鑑定は進んでいる」「アメリカの手法を受け入れるべき」と考える方もいらっしゃるようですが,私は日本の筆跡鑑定はアメリカよりも,圧倒的に勝る技術開発ができるという考えです。その理由を解説したいと思います。

上図のように,英語の筆記体と漢字は大きく異なります。書き癖が多く出現するのは,漢字であることは皆さまがお気づきになられている通りです。こんなにも書き癖が現れやすい漢字に対して,伝統的筆跡鑑定法や計測的筆跡鑑定法の「筆跡特徴である画の長さや角度,面積,終筆部の形状を比較検討し,筆者識別」をするだけであれば,英語の筆記体を調査することと変わりないのです。

漢字にある非常に多くの書き癖を分析すれば,筆跡鑑定によって筆者識別の精度は格段に向上するのです。偽造文書を暴くのであれば,この書き癖の違いを科学的に証明すればよいのです。その科学が脳科学でいう「手続き記憶」であり,この記憶の解明こそが筆跡鑑定を発展させる要なのです。

脳科学的筆跡鑑定法は,漢字を使う文化である我が国において著しい発展を遂げるものと確信しています。今まさに,日本の筆跡鑑定が世界をリードできる環境にあるのです。

コメント