太宰治の新発見原稿は本物か!?筆跡鑑定で迫る真実

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先日、作家・太宰治の直筆原稿が発見されたというニュースが世間を賑わせました。筆跡鑑定の専門家として、私もこの話題には大変興味を惹かれ、実際にその原稿を鑑定してみることにしました。

今回の鑑定で特に重要視したのは、**「書字スピード」**の調査です。もし、この原稿が偽造されたものであれば、偽造者は太宰治の筆跡を隣に置いて真似て書く(臨書)、あるいは光に透かしてなぞり書きをする(透写)といった方法を取るでしょう。

しかし、巧妙に思えるこれらの偽造方法にも限界があります。微細な特徴を多数真似て書くことは非常に困難ですし、模倣に集中すれば当然、書くスピードは遅くなります。その結果、線に勢いがなくなり、筆跡の「張り」が失われてしまうのです。逆に、速く書けば似せて書くことは難しくなり、ついには偽造者自身の書き癖が露呈してしまいます。

つまり、今回の鑑定では、書字スピードが速い筆跡であれば、多くの本人の書き癖が恒常的に現れているはずだ、という点に注目しました。

このスピードでは偽造は不可能!

皆さんもこの文章の筆跡を見ればお分かりいただけると思いますが、決してゆっくり書かれたものではありません。むしろ、やや速いスピードで書かれている印象を受けるのではないでしょうか。このスピードで、微細な特徴を含む多くの書き癖を真似て書くことは、プロの鑑定士である私ですら至難の業です。

偽造者であれば、似せて書こうとすれば筆速が落ち、スピードを上げれば似せて書けないという「板挟み」の状態に陥ります。つまり、書字スピードが速いのに、太宰治本人に特有の書き癖が多数出現しているかどうかを調べれば、その筆跡が本物かどうかは容易に判断できるのです。これこそが、偽造筆跡の限界に他なりません。


太宰治の「書き癖」を徹底調査!

私たちは、太宰治のこれまでの真筆資料を徹底的に分析し、彼に特有の「書き癖(筆跡特徴の恒常性)」を多数特定しました。そして、新しく発見された「雀」の原稿に、これらの書き癖がどれだけ出現しているかを詳細に調査しました。

ここでは、特に顕著な特徴が見られたいくつかの文字をご紹介しましょう。

1. 「れ」の文字に見る太宰治らしさ


2. 「が」の文字に潜む決定的な証拠


3. 「な」の文字に表れる個性


4. 「だ」「思」の文字にも見られる特徴

これらの2文字についてはデータベースによる希少性の明示はできませんが、これまで指摘した書き癖は全部で15箇所にも及びます。

結論:これは太宰治「真筆」に間違いない!

「雀」の原稿の筆跡を偽造者が書こうとすれば、これら15箇所もの微細な特徴を含むすべての書き癖を正確に把握し、しかもそれらを「やや速い速度」で真似て書く必要があります。さらに、これらの書き癖のほとんどはありふれたものではなく、非常に希少性の高いものばかりです。

このような「神業」は、誰にもできるものではありません。

したがって、新しく発見された「雀」の原稿の筆跡に、太宰治の数々の特徴的な書き癖がこれほど多く出現しているのは、太宰治本人が書いたものであるからに他なりません。

今回の筆跡鑑定の結果、「雀」の原稿の筆跡が太宰治の真筆であることに間違いありませんと断言できます。


鑑定人:筆跡鑑定人 二瓶 淳一(当研究所代表)

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