筆跡鑑定の現状と課題
これまでもブログで指摘してきたように、裁判所は筆跡鑑定の信頼性について懐疑的な見方をしているようです。その背景には、「伝統的筆跡鑑定法」と呼ばれる、半世紀以上前から行われてきた鑑定手法に限界があることが明らかになってきたためです。この手法では、筆者特定の精度がDNA鑑定や指紋鑑定と比較して著しく低いことが判明しています。つまり、すべての筆跡鑑定が信頼できないわけではなく、「伝統的筆跡鑑定法」やそれに類似する「計測的手法」の問題なのです。
例えば、私が作成した遺言書の偽造鑑定書の一部を例にとると、一般の方が見ても100%偽造とわかるような筆跡であっても、伝統的筆跡鑑定法を用いた鑑定人が「同一人物の筆跡である」と結論づけ、それが裁判所に提出されることがあります。そして驚くことに、ある地方裁判所では、そのような鑑定書に基づいて「同一人物の筆跡」という判決が下された事例も存在します。これは、偽造を訴えた方々にとっては想像を絶するほど悔しい結果であり、決して珍しいことではありません。

裁判所の認識と実態の乖離
伝統的筆跡鑑定や計測的手法を用いる一部の鑑定業者は、自らの鑑定法であれば「筆跡をごまかすことはほぼできない」と主張していますが、これは裁判所の見解とは真逆です。このような虚偽がまかり通る限り、善良な人々が不利益を被り続けることになります。
私たちは、現状の筆跡鑑定に対する裁判所の考えを真摯に受け止め、この誤った状況をどのように解決していくべきか真剣に考える必要があります。
解決に向けた取り組み
その取り組みの一つが、このブログでの情報発信です。そしてもう一つは、弁護士の方々への筆跡鑑定に関するアドバイスの強化です。現在、多くの弁護士と協力し、裁判官が筆跡鑑定書を十分に理解していないケースが多いという現状を踏まえ、精度の高い筆跡鑑定法が存在することをどのように効果的にアピールしていくかという課題に取り組んでいます。単に鑑定書を提出するだけでは、その真価が伝わらないのです。
筆跡が争点となる裁判で、正しい筆跡鑑定が採用されないのは明らかにおかしいことです。この背景には、上述のような伝統的筆跡鑑定法の限界と、それに対する裁判所の認識不足があります。
勝訴の可能性を高めるために
遺言書、遺産分割協議書、養子縁組届など、筆跡の偽造が争点となる裁判において、裁判所が状況証拠に加えて正しい筆跡鑑定の重要性を理解すれば、筆跡鑑定書の内容を吟味することで勝訴する可能性は格段に高まります。
これは決して簡単な道ではありませんが、善良な方々が報われるよう、私はこれからも共に闘い続けます。

筆跡鑑定に関するご相談やご質問がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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