筆跡鑑定の依頼を考えているあなたへ:その「裁判所のお墨付き」は本当ですか?

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筆跡鑑定が必要となり、鑑定所を探しているあなたは、ウェブサイトに掲げられた「裁判所からの依頼実績」や「裁判所からも信頼される鑑定所」といった言葉を見て、安心感を覚えているかもしれません。

しかし、その安心感は、あなたの正義を歪める危険な落とし穴かもしれません。

残念ながら、多くの鑑定所がこの「裁判所実績」を宣伝文句として悪用しているのが現状です。これは、真実を求める依頼者を欺くだけでなく、公正な司法判断を妨げる深刻な問題に繋がっています。今回は、この「見せかけの実績」の危険性について、具体例を挙げて解説します。


なぜ「裁判所実績」が危険な宣伝文句なのか?

1. 裁判所は鑑定手法の科学性を保証していない

裁判所が特定の鑑定所に鑑定を依頼するのは、必ずしもその鑑定所が採用する手法そのものの科学的妥当性や正答率を厳密に審査・保証した結果ではありません。

裁判所が鑑定を委託する目的は、事件の迅速な処理と公正な判断を助けるためであり、その鑑定人の過去の実績や専門分野が一定の水準を満たしていると判断した場合に行われます。これはあくまで「鑑定が必要な際に、いつでも依頼できる専門家のリスト」に載っている状態に過ぎません。

2. 「裁判所実績」は「依頼数の多さ」に過ぎない

多くの鑑定所が謳う「裁判所からの実績」は、単に依頼される機会が多かったという事実を示すものです。

特に、インターネット上で検索上位に表示されやすい鑑定所や、積極的に広告を出している鑑定所は、裁判所からの依頼件数も多くなる傾向があります。しかし、これは「信頼性」よりも「知名度」や「アクセスしやすさ」が原因である可能性も否定できません。

3. 裁判官の「固定観念」に依存している可能性

日本の裁判所では、筆跡鑑定そのものに対する固定観念が存在する場合があります。

「伝統的鑑定法」の限界が半世紀以上前に指摘されて以来、「筆跡鑑定は信用できない」と考える裁判官は少なくありません。そのため、依頼された鑑定書が提出されても、その内容を深く吟味せずに、鑑定結果を軽視する傾向が見られます。この状況を利用し、鑑定書の厚さや表面的な体裁、そして「見せかけの権威」を前面に出すことで、裁判所から依頼を得ているケースも存在します。


実例で見る「見せかけの実績」

あなたが「裁判所からの実績」を信じて依頼した鑑定所で、次のような事態が起こるかもしれません。

  • 事例:内容が伴わない「厚い鑑定書」 鑑定所Aは「裁判所からの実績多数」を謳っています。鑑定を依頼すると、多くの図やグラフ、専門用語が並んだ分厚い鑑定書が届きました。しかし、その中身をよく見ると、科学的な根拠に乏しく、客観的な分析がなされていません。裁判に提出しても、裁判官は「この鑑定書は信用できない」と判断し、あなたの主張は退けられてしまいます。
  • 事例:宣伝文句に利用される「公的な肩書」 鑑定人Bは「元警察官で、裁判所の嘱託鑑定人」という肩書を強くアピールしています。しかし、その鑑定は、単なる主観的な判断や経験に基づいたもので、科学的な検証ができません。依頼者は「元警察官なら信頼できるだろう」と考え依頼しますが、裁判ではその鑑定が「経験と勘」に過ぎないと判断され、偽造された筆跡が「本物」とされてしまうかもしれません。

結論:本当に信頼できる鑑定所を見抜くために

「裁判所からの実績があるから安心」という言葉は、依頼者や弁護士、そして司法までもが「偽りの科学」に騙される危険な現状を象徴しています。

あなたの正義を守るために、鑑定所を選ぶ際は、以下の点を厳しく見極めてください。

  • 鑑定手法の透明性: どのような科学的根拠に基づいて鑑定を行っているか、具体的に説明を求めてください。
  • コミュニケーション: 鑑定人があなたの疑問や不安に対し、誠実かつ分かりやすく説明してくれるか。
  • 鑑定人の倫理観: 己の利益のためではなく、真実の究明を第一に考えているか。

鑑定書を提出する目的は、裁判官を説得することです。その鑑定書が論理的で客観的、そして科学的に裏付けられたものであるかを、あなた自身が判断できるまで、納得のいく説明を求めることが何よりも重要です。

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