故人も泣く判決:なぜ明らかに偽造の遺言書が「真筆」とされるのか

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明らかに偽造であると断言できる遺言書が、「真筆」と判断される。故人の方は、きっと草葉の陰で泣いているに違いありません。

筆跡鑑定の証拠能力は低いと言われているにもかかわらず、「お前はどうして遺言書が明らかに偽造されたものと言えるのか?」と意見される法曹関係者がいらっしゃるのであれば、どうぞ私を呼びつけて検証してください。喜んで検証実験に参加させていただきます。むしろ、それを望んでいます。案件によっては、筆跡の真偽など、超簡単に分かると言い切っても構わないとさえ思っています。


筆跡鑑定が軽視される裁判の現実

遺言書の裁判では、原告・被告双方から鑑定書が提出され、お互いの鑑定内容について意見や反論を述べるために反論書が提出されるケースが多くあります。その後、証人として法廷で鑑定人が相手方の意見に対する反論の説明や証拠などを述べるケースもあります。今回のケースも、原被告が鑑定書、反論書を裁判所に提出し、さらに私が証人尋問のため出廷した案件でした。

これまで何度も繰り返しこのブログに書いてきたことですが、遺言書無効確認訴訟において大切なのは以下の点です。

  1. 状況証拠のみに大きく偏った判決は非常に危険である。
  2. 争点は「本人の筆跡」かどうかであり、状況証拠と本人の筆跡であることの因果関係はそれほど大きいものではない。 嘘がうまい人物や、巧みに状況を操作できる人物が有利となるケースも考えられます。
  3. 筆跡鑑定が少なくとも状況証拠と同等、若しくはそれ以上に評価されなければ、正しい判断は行えない。

筆跡鑑定書が裁判に数多く提出されていることを鑑みれば、筆跡裁判においては筆跡鑑定書は理論上なくてはならない判断材料ではないでしょうか。


判決文に見る筆跡鑑定の「無評価」

今回の判決文では、「裁判所の判断」の章は全部で5ページ半、行数にして134行にわたって判断された根拠が記載されていました。しかし、その中で筆跡鑑定について触れているのは、たった1行程度です。

「原被告が提出するいずれの私的な筆跡鑑定結果も被相続人による自署の有無を左右するものとは評価できない」

つまり、裁判所の判断という項目に書かれている筆跡鑑定についての判断は、全内容の1%にも満たないのです。もちろん、なぜ評価できないのか、その理由は一切書かれていませんでした。

これは、筆跡鑑定が全く評価されていないばかりか、ほぼ100%状況証拠によって判断されたということを意味します。このような判決文を書く裁判官がいるという現実を、我々は心に留めておく必要があります。


負けるわけにはいかない:故人の無念を晴らすために

もちろん、控訴することになると思われますが、このような稚拙な偽造筆跡案件の裁判で負けるわけにはいきません。被相続人の方は、きっと草葉の陰で泣いているに違いありません。

私たちは、故人の無念を晴らすため、そして筆跡鑑定の真価を世に問うために、これからも闘い続けます。


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