今日は、私がなぜ筆跡鑑定の料金を一律の定額にしているのか、その理由についてお話ししたいと思います。
筆跡鑑定を依頼される方から、よく「資料の量や文字数で料金は変わりますか?」と質問をいただきます。正直にお答えすると、私のところでは変わりません。
「え、なぜ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。一般的なサービスでは、作業量が増えれば料金も上がるのが普通です。例えば、引越しを頼む時、荷物がダンボール10箱と100箱では、料金が違うのは当然ですよね。
でも、私は筆跡鑑定をこの「作業量」という考え方では捉えていません。
料金は「時間給」ではなく「技術料」
私の考える筆跡鑑定の料金とは、かけた時間や扱った文字の数に対するものではなく、「技術」に対する対価です。
筆跡鑑定に求められるのは、単なる文字の比較ではありません。「この筆跡が本物か、偽物か」を、論理的かつ説得力のある形で証明する技術です。特に、裁判などで証拠として提出される遺言書の鑑定では、その鑑定結果が人生を大きく左右することもあります。
どれだけ資料が多くても、どれだけ文字数が少なくても、鑑定に使う技術や集中力、そして「絶対間違えてはいけない」というプレッシャーは変わりません。それは、たった1枚の遺言書を鑑定する時も、何十枚もの資料を扱う時も同じです。
事例で考えてみましょう
ここで、少し具体的な例を挙げてみます。
Aさんのケース:遺言書1枚の鑑定依頼。 Bさんのケース:脅迫状1枚と、比較のために書かせた文字がびっしり書かれたノート数冊の鑑定依頼。
一見すると、Bさんのケースの方が圧倒的に資料が多く、作業量が多いように思えます。しかし、鑑定の難易度はどうでしょうか?
Aさんのケースは、たった1枚の筆跡から、その人の個性や癖を読み取り、真贋を見極める必要があります。これは非常に高度な技術と経験が求められます。
一方、Bさんのケースは、資料は多いものの、筆跡を比較する上での参考資料が豊富にあるため、「どの文字に注目するか」を見極めることが重要になります。もちろん手間はかかりますが、これは「鑑定の精度」を左右するものではありません。
どちらのケースも、「真実を見抜く」というゴールは同じです。そして、そのゴールにたどり着くために必要な私の「技術力」に変わりはないのです。
安心して依頼していただくために
もし、資料の多さで料金が変わるとしたら、どうでしょう?
「この資料も提出したら、もっと高くなるかな…」 「お金がないから、この資料は出すのをやめておこうか…」
依頼される方が、費用を気にして「本当に必要な資料」を提出できないとしたら、それは鑑定の精度を下げてしまうことになりかねません。それでは、本末転倒です。
私は、お客様に「必要な資料はすべて安心して提出してください」と言えるように、そして「料金のことを気にせず、真実の解明に集中していただきたい」という思いから、定額制を採用しています。
私の料金は、どれだけ時間がかかっても、どれだけ文字が多くても、「最高の精度と説得力を持つ鑑定結果」を提供するためのものです。
筆跡鑑定をご検討の際は、ぜひこの考え方も参考にしていただければ幸いです。ご相談、お待ちしております。


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