遺言書は「不自然な点」、怪文書は「希少なクセ」:対象で変わる筆跡鑑定の視点

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筆跡鑑定は、鑑定する対象が遺言書か怪文書かによって、見るべきポイントが全く異なります。鑑定人は、単に筆跡の見た目が似ているかどうかを判断するのではなく、その筆跡に隠された筆者の意図を読み解くことが求められます。

遺言書の筆跡鑑定:本物の「個性」にない「不自然な点」を探す

遺言書を書く人は、自分の筆跡を隠す意図がありません。そのため、普段から無意識に出る恒常的な筆跡個性(その人特有の文字の形やバランスなど)が自然に現れているはずです。

もし、遺言書が偽造されたものであれば、筆者は本人の筆跡を真似ようとします。この真似る過程で、不自然な震えが生じたり、本来あるべき恒常的な個性が欠けていたりする、不自然な相違点が必ず現れます。したがって、遺言書の鑑定では、この「不自然な点」を徹底的に探すことに焦点を当てます。

怪文書の筆跡鑑定:変装された筆跡から「希少なクセ」を見つけ出す

一方、怪文書は、筆者が自分の正体を隠すために、意図的に筆跡を変えていることがほとんどです。そのため、見た目の形は本人と異なって見えるのが一般的です。

しかし、人間は完全に自分のクセを消すことはできません。変装された筆跡の奥には、ごく一部の人にしか見られない希少な筆跡個性(例:特定の文字の独特な線の払い方や癖)が無意識に現れることがあります。したがって、怪文書の鑑定では、この希少なクセが多数見つかるかどうかを判断の基準とします。


結論

このように、筆跡鑑定は、対象の性質と筆者の心理を深く理解し、それに合わせて動的に視点を変えることが不可欠です。単なる見た目の類似性だけでなく、その筆跡が持つ背景を読み解くことが、正しい筆者識別につながります。

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