近年、遺言書や契約書の筆跡鑑定を依頼される方が増えています。人生の重要な局面に関わる筆跡鑑定だからこそ、信頼できる鑑定人を選ぶことは、何よりも大切なことです。
しかし、残念ながら、鑑定人の肩書きや権威に隠された、信じがたい矛盾が存在することも事実です。今回は、実際に私が目にした、ある鑑定書に潜んでいた「二つの顔」についてお話しします。
裁判で「信憑性に疑問」とされた鑑定法
筆跡鑑定は、裁判で証拠として提出されることがあり、その鑑定手法には厳格な客観性と論理性が求められます。ある鑑定人は、裁判の判決で「信憑性に疑問がある」と指摘された、とある鑑定法を強く批判していました。
彼は、その手法が科学的根拠に乏しく、鑑定人個人の主観が入り込む余地が大きいと、自身のブログや講演で繰り返し訴えていたのです。その姿勢は、筆跡鑑定のプロとして、尊敬に値するものでした。
鑑定書に現れた「もう一つの顔」
ところが、その彼が提出した鑑定書を詳しく分析したところ、信じられない事実が判明しました。
彼が「信憑性に欠ける」と批判していた、まさにその手法そのものが、彼の鑑定書の根幹を成していたのです。
これは、まるで「この薬は効果がないどころか、副作用が強すぎる」と断言しながら、自分のクリニックでその薬を処方している医師のようなものです。
鑑定人自身の論理が破綻しているだけでなく、筆跡鑑定を依頼した人々の信頼をも裏切る行為と言わざるを得ません。
「協会」という名の看板
なぜこのような矛盾が生まれてしまうのでしょうか?
それは、彼が「〇〇協会」という権威ある名称を掲げて活動していたことに起因していると考えられます。一般の方は、協会の名を聞けば、そこに専門性や信頼性があると考えがちです。しかし、協会という看板が、鑑定人自身のずさんな手法を隠すためのツールとして利用されているのだとしたら、それは筆跡鑑定業界全体の品位を貶める行為です。
最後に
私たちは、筆跡鑑定の専門家として、業界の健全な発展と品位の維持に努めなければなりません。
筆跡鑑定を依頼される際は、鑑定人の肩書きだけでなく、鑑定書の内容が論理的であるか、そして鑑定人自身に矛盾がないか、慎重に判断することをお勧めします。
この記事が、皆さんの筆跡鑑定の依頼に役立つことを願っています。


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