まさか自分の身に降りかかるとは思わない筆跡鑑定のトラブル。もし、あなたが大切な書類の筆跡に疑問を持った時、誰に相談すればいいか、すぐに答えられますか?
多くの人にとって、筆跡鑑定を行う鑑定人は、一生に一度関わるかどうかの存在です。この専門性の高さゆえに、私たちは情報の非対称性という大きな落とし穴に直面します。今回は、筆跡鑑定を例に、専門家と一般人の間に存在する情報格差と、そこから身を守るための具体的な行動をお伝えします。
「情報の非対称性」が引き起こすトラブル
情報の非対称性とは、専門家だけが持つ情報や知識を、依頼者が持っていない状態のこと。これにより、依頼者は不当な料金を支払ったり、間違った鑑定結果を受け入れてしまったりするリスクにさらされます。
実際にあった事例を見てみましょう。ある遺産相続のトラブルで、遺言書の真贋を確かめるため、筆跡鑑定を依頼した方がいました。依頼者は、その鑑定人が有名大学で教鞭をとっていた経歴を知り、その権威的な態度に圧倒されてしまいました。
鑑定人は、依頼者の不安につけ込み、鑑定の初期費用として、一般的な相場をはるかに超える高額な料金を提示しました。依頼者が「なぜこんなに高いのですか?」と尋ねると、「これは特別に高度な鑑定だからです」と、あいまいな返答を繰り返しました。
依頼者は、不信感と、お金を払ってしまった後悔から、夜も眠れないほど悩みました。しかし、諦めきれず、別の鑑定人に依頼することを決意。
再鑑定の結果を聞いた瞬間、依頼者は驚愕しました。新しい鑑定人は「これは偽物である可能性が極めて高い」と結論づけ、その理由を丁寧に説明してくれたのです。そこには、まるでぎこちなく、何度も書き直したかのような筆跡の乱れや、本来の筆跡にはない不自然な筆圧の痕跡が明確に示されていました。
最初の鑑定人は、依頼者が鑑定の知識を持たないことをいいことに、根拠のない鑑定結果をでっち上げ、不当な利益を得ていたのです。
信頼できる鑑定人を見極める3つの行動
筆跡鑑定業界には、国が定めた統一の資格や免許はありません。特定の団体に所属していることだけでは、その鑑定人のスキルや信頼性は保証されません。私たちは、鑑定人個人の実力と誠実さを自分で見極める必要があります。
1. 鑑定人の経歴と実績を徹底的に調べる
鑑定人がどのような経験を積んできたか、これまでにどのような事案を扱ってきたかを調べてみましょう。ここで注意が必要なのは、「テレビ出演」や「メディア露出」が必ずしも鑑定の実力とは直結しないという点です。タレント性や話術があるだけで、実際の鑑定経験が乏しい可能性もあります。本当に重要なのは、鑑定内容を具体的に説明できるかです。
2. 料金体系をしっかり確認する
筆跡鑑定は、技術の差が非常に大きいため、単純な価格比較だけでは判断できません。中には、鑑定の進捗に応じて料金が変動する鑑定人もいますが、逆に固定料金で最大限の説得力を持つ鑑定書を作成する鑑定人の方が信頼できるケースもあります。重要なのは、その料金が鑑定の専門性と見合っているか、そして追加料金の有無がはっきりしているかです。
3. 鑑定のプロセスを納得いくまで聞く
信頼できる鑑定人は、鑑定に使う資料や鑑定の手順を丁寧に説明してくれます。「どうしてこの結論に至ったのか」という根拠を明確に示してくれるので、納得してサービスを受けられます。
鑑定人に聞くべき具体的な質問リスト
専門的なサービスを受ける際には、「わからないことをそのままにしない」という姿勢が非常に重要です。以下の質問を鑑定人に投げかけ、その回答内容から信頼性を判断しましょう。
- 鑑定の根拠: 「この筆跡の線の入り、形、そして筆圧が、なぜ本物ではないと判断したのですか?」
- 鑑定の手順: 「鑑定には、どのような資料を何点用意すればよいですか?」
- 鑑定書の説得力: 「裁判で証拠として提出する場合、どのような点に説得力を持たせるよう工夫していますか?」
- 料金の明性: 「最終的にかかる費用はいくらですか?追加料金が発生する可能性はありますか?」
この記事をきっかけに、専門家選びの際に一歩踏み込んで調べる習慣をつけていただければ幸いです。
まずは、この記事を保存して、もしもの時のために備えましょう。


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