🕵️ 「裁判所からの指名」は万能ではない!筆跡鑑定人の“実績”と“科学的実力”の間に潜む真実

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筆跡鑑定を依頼する際、多くの鑑定業者が「裁判所からの指名(嘱託)実績あり」を最大のセールスポイントにしています。この権威ある実績は心強いものですが、この言葉を鵜呑みにするのは危険です。

なぜなら、その実績と鑑定技術の間に大きな乖離があるケースが少なくないからです。本記事では、「裁判所の指名」が何を意味し、本当に信頼できる鑑定人を見極めるための客観的な視点を解説します。


1. 「裁判所の指名」が保証する領域と、保証しない領域

まず、「裁判所からの指名」という実績が持つ意味合いを正しく理解しましょう。

📌 裁判所の指名が証明するもの(中立性の証明)

裁判所が鑑定人を指名する第一の目的は、訴訟手続きにおける公正性の担保にあります。

  • 中立公正な立場: 少なくとも過去の訴訟において、当事者と利害関係のない第三者として鑑定を行った実績があること。
  • 訴訟実務の適格性: 裁判の進め方や鑑定書の形式について、最低限の知識と対応能力があること。

この実績は、鑑定人を選ぶ際の信頼性の足切り基準としては非常に価値があります。

⚠️ 裁判所の指名が保証しないこと(技術の最高水準)

裁判所は、鑑定手法の科学的な妥当性や、鑑定技術の最新性・優劣を厳しく審査する立場にはありません。

その結果、指名実績を持つ鑑定人の中にも、鑑定の根拠が客観的なデータや論理的分析を欠き、「長年の勘」や「熟練者の見解」といった主観的な印象論に頼りすぎているケースが散見されます。業者は、この「中立性の証明」を、あたかも「科学技術の最高峰の証明」であるかのように宣伝しているのが実態です。


2. 鑑定書を読む専門家が抱く「疑問」の核心

本当に質の高い鑑定書は、誰が見てもその論理が追える再現性客観性に満ちています。実力不足の鑑定書に共通する問題点は、主に以下の2点です。

抽象的な表現の多用

鑑定の核心である筆跡の個性特徴を判断する際に、具体的な根拠を示さない抽象的な記述が多く、客観的な比較や検証が困難です。この主観的な印象論だけでは、裁判官の心証を動かすことはできません。

判断ロジックの論理的な欠如

筆跡鑑定の核心は、採用するロジック(論理)に基づいて、説得力ある判断を系統的に示すことです。実力不足の鑑定書は、そのロジックが曖昧で、なぜその結論に至ったのかを論理的に追うことができないため、証拠としての価値が著しく低くなります。


3. 真に信頼できる鑑定人を見極める「論理性の二重チェック」

「裁判所の指名」を最低限の適格性として評価しつつ、本当に質の高い鑑定結果を得るためには、以下の「客観性と論理性の検証」が必要です。

評価ポイント避けるべき回答例求めるべき回答例(核心)
鑑定ロジックの客観性「閾値の根拠は明示できません」「採用する鑑定ロジック(論理)が科学的基礎研究に基づき、一貫性を持っているか」
理論の妥当性「独自理論のため詳細は非公開です」「鑑定理論を系統的に文書化し、その知識を継続的に更新しています」
鑑定書の構造「結論を重視した簡潔な報告書を作成します」「判断に至るまでの過程を、具体的な図や説明を用いて、誰でも論理的に追えるよう詳細に記述します」

筆跡鑑定には、DNA鑑定のような査読済みの統一された鑑定法は現在存在しません。だからこそ、鑑定人の「論理構築力」と「鑑定ロジックの科学性」が命となります。

「裁判所からの指名」は、業者を選ぶ上での一つの入り口に過ぎません。その言葉の裏側に隠された鑑定理論の客観的な裏付けと、鑑定書の論理的な構造こそが、あなたの訴訟の鍵を握る真の信頼性であると心得ましょう。

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