トラスト筆跡鑑定研究所・二瓶淳一
筆跡鑑定を検討されている方、あるいはすでに鑑定書をお持ちの方に、非常に重要な事実をお伝えします。
あなたが時間と費用をかけて作成した鑑定書が、裁判などで「科学的根拠に乏しい」と判断され、その証拠能力を失うかもしれません。その原因は、鑑定の核となるべき分析が、現実には行われていないという、業界が直面している衝撃的な事実にあります。
1. 鑑定の核「個人内変動」に立ちはだかる“30個の壁”
筆跡鑑定が科学的であると主張する根拠は、鑑定人の主観ではなく、執筆者ごとの筆跡の「ゆらぎの範囲」(個人内変動幅)を統計的に分析することにあります。
これは、鑑定書でも「伝統的な方法、数値解析法ともに重要」と強調される、最も重要な分析です。この分析によって、その筆跡が偶然の変動なのか、他人の筆跡なのかを区別できるとされています。
しかし、この分析を行うには、統計学上、動かしがたい「30個の壁」が存在します。
- 科学的な要求: 筆跡の変動幅を正確に、統計的に信頼できるレベルで算出するためには、最低でも30個程度の比較筆跡サンプル(同字の資料)が必要とされています。
- 鑑定実務の現実: 遺言書や契約書などの事件で提出される比較資料は、現実にはせいぜい5個程度しか集まらないことがほとんどです。
【二瓶鑑定人の緊急警告】統計的根拠を失った鑑定書のリスク
サンプル数が統計的な要求の30個に対し、現実が5個程度であるというこの決定的な乖離は、以下の深刻なリスクをあなたの鑑定書にもたらします。
- 科学的根拠の崩壊: 「個人内変動の範囲を分析すること」という鑑定の前提そのものが、サンプル数の不足によって機能していません。鑑定書に「分析した」と記載されていても、それは統計的な裏付けのない、曖昧な判断に過ぎなくなります。
- 鑑定結果の「主観化」: 個人内変動の範囲が正確に定まらない以上、鑑定人は結局、自身の**「長年の経験と勘」という主観的な判断に頼るしかありません。科学的であるべき鑑定が、結果的に個人の主観**に依存している状態です。
- 証拠能力の無効化: あなたの鑑定書が「主観に基づいている」と見なされた場合、裁判の場で相手方から**「科学的根拠に乏しく、証拠として無価値である」と厳しく批判される可能性があります。その結果、あなたの時間と費用、そして依頼目的が無駄になってしまう**のです。
3. AIの定説に潜む罠:無批判な情報に騙されないで
AIアシスタントや一般的な解説が「個人内変動の分析が重要だ」と回答するのは、理論的には正しいからです。
しかし、AIはその理論を実現するための「統計的限界」を知りません。権威ある過去の資料を無批判に継承し、この現実の批判や科学的限界を無視し続けることは、筆跡鑑定の信頼性を過大に評価させ、社会に不利益をもたらす、情報社会の大きな問題です。
4. 鑑定を依頼する前に、必ず問いかけてください
鑑定書を無駄にしないために、依頼人は以下の点を鑑定人に正面から確認すべきです。
「比較資料が少ない場合、統計的に信頼できる個人内変動の範囲を、具体的にどのように算出して判断しているのですか?」
この質問に、統計的な根拠をもって明確に答えられる鑑定人こそが、あなたの依頼に応えるに足る真のプロフェッショナルです。
トラスト筆跡鑑定研究所は、この真実を公開することで、筆跡鑑定の信頼性を本当に高めるための議論を促します。あなたの鑑定が、真に公正な証拠となるために。


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