裁判所が筆跡鑑定人を選定する方法は,原告と被告から意見を聞いたうえで筆跡鑑定人候補者を選定する場合と,裁判官が自ら鑑定人の候補者を選任する場合の二つがあるようです。
いずれも,どのような理由で筆跡鑑定人を選定するのか定かではありませんが,ひとつの選定条件の中には鑑定書作成費用が含まれている事は間違いないでしょう。
私のところにも,裁判所から「筆跡鑑定書の見積もりを出してほしい」と言われたことが幾度となくあります。「相見積もり」と分かっているので,「料金は一般料金の2倍です」といっております。もちろん,相見積もりでなければ一般料金となります。裁判所にこんなことを言ったら依頼されないことは分かり切っているのですが,それはこのような理由です。
「相見積もり」とは,「見積をお願いしたところと商品価値はほぼ同じ」という前提があります。他の鑑定人とほぼ同じ技術レベルであり,且つ自身もそのように思っていればきちんと見積を出すかもしれません。私は他の鑑定人と技術レベルや取り組み方,覚悟が全く違うと自負しておりますので,このような考えは微塵もありません。それに加えて,多くの鑑定人が採用している伝統的筆跡鑑定法を始めとする類似・非類似で筆者識別をする「類似鑑定法」では筆跡鑑定ができないことを知っているからです。私にとって,相見積りの依頼はとんでもないことであり「それならば,類似性が高い=本人筆跡と考えている鑑定ができない鑑定人に依頼してください」ということになります。意味のない鑑定書に金を払うのですから,これほど高いものはありません。早く気づいてくれればいいのですが残念です。
話を元に戻しますが,裁判所は「どの筆跡鑑定人も技術レベルはそんなに変わりない」と思っており,その中でも「費用を含め,少しでも秀でている所はどこか」という考えではないでしょうか。そもそも,筆者識別ができない鑑定法に意味はないと思うのですが,裁判所はそれを見抜けませんので仕方ありません。このことが世に広まるまでは少し時間がかるようです。
つまり,筆跡鑑定ができない鑑定人の中から選定しても同じということになります。しかも,圧倒的に同筆という鑑定結果が出されるという「おまけ付」です。
遺言無効確認訴訟は裁判所は「本人の真筆」という前提で裁判を始めることになります。ここに,選定された筆跡鑑定書に書かれた「同一人の筆跡」という鑑定結果が出れば,原告が不利になることは否めません。なぜなら,筆跡鑑定人は公平に選ばれたという理屈が成り立つからです。実は,筆跡鑑定人を選定するうえで最も重要なことは鑑定人の技術力であって公平性ではないのですが,裁判所はどの鑑定人が優秀かを見極める術がないので仕方ありません。
結論を言います。遺言無効確認訴訟を提起した原告は裁判所の選定した鑑定人を選定されると不利になる可能性が高くなります。原告は,裁判所に筆跡鑑定人を選定させることを阻止する事が何よりも重要です。
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