【弁護士・法務担当者必読】その鑑定書は「組織」として責任を負えますか? 「名ばかり部門」と「嘱託(外部委託)」に潜む致命的なリーガルリスク

所長コラム

近年、DNA鑑定や科学捜査を標榜する大規模な研究所が、筆跡鑑定などの「ソフトサイエンス領域」にも参入しています。立派な組織図やウェブサイトを見ると、一見して組織的な品質管理(Quality Assurance)がなされているように見受けられます。

しかし、弁護士や法務担当者が証拠能力を精査する際、決して見落としてはならない「致命的な矛盾」が存在するケースがあります。

それは、「部門(組織)」を名乗りながら、実態は「嘱託(外部個人)」に丸投げされているという、責任所在の空洞化問題です。

1. 「部門」という看板と「嘱託」という実態の乖離

お手元の鑑定書、あるいは相手方から提出された証拠資料(甲号証)の以下の2点を確認してください。

  • 表紙・冒頭:作成部署として「筆跡鑑定部門」「文書鑑定課」などの組織名が記載されている。
  • 署名欄:作成者の肩書きが「嘱託(Consigned / Non-regular)」となっている。

このねじれ現象は、企業ガバナンスの観点から極めて重大なリスクを示唆しています。「部門」とは通常、その法人の指揮命令系統下にある常設組織を指します。しかし、実務を行うのが「嘱託(外部契約者)」のみである場合、それは組織としての体を成していません。

依頼者は「法人の組織力と信用」に対価を支払っているにもかかわらず、実態は「個人の職人芸」が提供されているに過ぎず、優良誤認(Misleading Representation)の懸念があります。

2. 共同研究者はいるのに、なぜ「連帯署名」がないのか?

一部の鑑定機関では、「当社の嘱託鑑定人は、当社の正社員研究員と共同で論文を発表しており、連携は密である」と主張し、信頼性を担保しようとします。実際に、鑑定書の巻末に共同研究の業績リストが添付されていることもあります。

ここに最大の「責任回避(Risk Shedding)」の意図が隠されています。

もし、社員と嘱託が密接に連携し、組織としてその鑑定手法を確立しているのであれば、なぜ本番の鑑定書に、社員(あるいは部門責任者)の連帯署名・押印がないのでしょうか?

答えは論理的に一つしかありません。「研究成果としての権威付け」には社員の名前を利用するが、「万が一の誤鑑定による法的責任(Liability)」は嘱託個人に負わせたいからです。

これは、製造物責任の観点からも看過できない「トカゲの尻尾切り」構造です。

3. 情報セキュリティとChain of Custodyの断絶

鑑定人が「嘱託(外部)」である場合、物理的なセキュリティ境界も曖昧になります。

  • 重要な証拠資料(遺言書等の高解像度データ)は、研究所の管理サーバー内でのみ扱われているか?
  • 嘱託鑑定人の「自宅PC」や「私用デバイス」にデータが持ち出されていないか?

正規雇用されていない人間が実務を行う以上、企業のセキュリティポリシーがどこまで適用されているかは不透明であり、依頼者の秘密保持義務違反に直結するリスクがあります。

【実務資料】そのまま使える「照会書」テンプレート

相手方から提出された鑑定書に上記のような「組織と個人の乖離」が見られる場合、その証拠能力を弾劾するための「照会書(質問状)」を作成しました。

以下のテキストボックス内の文章をすべてコピーし、Word等の文書作成ソフトに貼り付けて、相手方への求釈明や尋問事項としてご使用ください。

弁護士・法務担当者用テンプレート コピーして使用

※ボックス内をクリックすると全選択されます。

結論:本物の「専門機関」の定義

法科学、特に筆跡鑑定において重要なのは、設備の豪華さや過去の論文リストではありません。「誰が、どのような覚悟と責任を持ってその結論を出したか」です。

当研究所(BSHAM™)は、外部の嘱託や下請けを一切使用せず、開発者自身が全責任を持って解析・執筆・署名を行います。それが、科学的証拠を扱う者としての最低限の流儀であると考えるからです。

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本記事でも触れた、法廷における筆跡鑑定の証拠価値が著しく低い現実や、科学的根拠のない「でたらめな鑑定」が業界に横行している実態については、拙著『筆跡鑑定をダメにした知ったかぶりの輩たち』にて詳細に告発しています。
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【業界の不正を断つ、科学的根拠】

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