04. 対照資料が少ない場合の救済措置

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SERIES 04

対照資料が少ない場合の救済措置
― 「本人の字が数枚しかない」という方へ

「故人が字を書く人ではなかった」「残っているのは年賀状が数枚だけ」――対照資料が乏しいことを理由に、鑑定をあきらめてしまう方がいます。しかし判定の成否を決めるのは資料の枚数ではありません。比較できる単位が架かるかどうかです。

決め手は「枚数」ではなく「橋」

鑑定資料と対照資料をつなぐ共通の照合単位を、当研究所は「橋」と呼んでいます。橋には三種類あります。

文字の橋

同じ文字が両方の資料に出てくる場合。最も分かりやすい橋です。

部品の橋

同じ文字がなくても、偏・旁・冠などの部品が共通していれば橋になります。違う文字どうしを渡せます。

系列の橋

字間・行の性状・大きさの取り方など、個々の文字に分解できない書きぶりの輪郭。

ここで重要なのは、部品の橋があるために、一致する文字が一つもなくても比較が成立し得るということです。「同じ字が無いから無理だろう」というのは、多くの場合、思い込みです。逆に、枚数がどれだけ多くても橋が架からなければ、判定は成立しません。

少ない資料でも、書き癖と認められるものがあります

通常、書き癖として採用するには「その人が繰り返しそう書いている」という反復の傾向を確かめます。資料が少ないと、この傾向が取れません。しかし当研究所の基準には、傾向が分からなくても書き癖と認めてよい例外が三つあります。

標準からの乖離

手本となる字形から明らかに外れた形。少ない資料でも、外れていること自体が観察できます。

誤字・字体の使い分け

画が一本多い、部品が別の字になっているなど。手続き記憶として身についているもので、その人固有の運動の出力です。

筆順

どの画をどの順で書くか。筆順は運動の軌道そのものであり、意識せずに繰り返されます。

これらが有効なのは、いずれも「回数を数えなくても成立する」種類の所見だからです。1枚しかない資料からでも、判定に使える発見が得られることがあります。量が少ないからと、ご自身で見切りをつけないでください。

ただし、血縁のある方が相手のときは注意が必要です

鑑定対象が、ご本人と血縁にある方の場合

親子・兄弟など血縁の方どうしは、もともと似た書き癖を持っていることがあります。文字数が十分にあれば、二人の癖の違いは現れてきます。しかし資料が少なく、確認できる箇所も少ない場合は、「似せて書いた」のか「もともと似ていた」のかを見分けられないことがあります。この場合、当研究所は無理に結論を出さず、判定を留保します。

対照資料が要らない監査段があります

BSHAM®の判定は四段体系(解説はこちら)で構成され、そのうち第2段の鑑定資料単独監査は、対照資料をまったく必要としません。争いのある文書そのものの内部で、運動の生成が破綻していないかを見る監査です。不自然な加筆、なぞり書きの痕跡、運動として説明のつかない線の生成――こうした所見は、比較を待たずに成立します。

※ただし、この監査が作動することと、結論に至れることは別です。鑑定資料の内部に不自然さが見つからなかった場合には、比較の足場である橋が改めて必要になります。期待だけを持っていただかないよう、先に申し上げておきます。

資料が少ないときこそ、混入が効いてしまう

もう一つ、少資料の事案に特有の落とし穴があります。対照資料が少ないほど、そこに他人の筆跡が1点混じっているだけで、基準そのものが大きく歪みます。10点のうち1点なら影響は限定的ですが、3点のうち1点であれば、基準の三分の一が別人ということになります。

ですから当研究所は、資料の多寡にかかわらず、比較の基準に用いる対照資料そのものを全件で監査しています(追加費用はありません)。監査の結果、除外すべき資料が出れば、少ない資料がさらに減ることもあります。それでも、汚れた基準の上に精密な比較を積むよりは正確です(対照資料の混入について)。

あわせてお願いです。「これは本人のものか分からない」という資料を、ご自身の判断で外さないでください。選り分けるのは鑑定側の仕事です。

むしろ難しいのは「署名だけ」の案件です

意外に思われるかもしれませんが、筆跡鑑定で本当に難しいのは長い文章ではなく署名です。理由は二つあります。第一に、画数の少ない単純な文字には、個人差の現れる場所がほとんどありません。第二に、数文字の名前には、文字をまたぐ部品――つまり部品の橋――が含まれないことが多いのです。

さらに、偽造者は署名を最も集中的に練習してきます。名前はわずか3〜5文字で練習の的が小さく、集中的に習熟できるからです。癖の出ない単純な名前ほど、鑑定が最も難しく、同時に偽造が最も容易――この非対称が、署名鑑定の困難の正体です。

当研究所が受任2,000件超に対して約100件をお断りしており、その大半が署名のみの依頼であるのは、この理由によります。断れない鑑定人の「断定」に、証拠価値はありません。

まず、橋が架かるかどうかをお答えします

資料が少ない案件でご相談いただいた場合、当研究所はまず橋の有無を確認します。架かるなら、どこまで言えるかをお伝えします。架からないなら、その理由とともに率直に申し上げます。この事前診断は無料です(01. 勝算の事前評価)。

資料はスマートフォンでの撮影画像で結構です。手元にあるものを、迷うものも含めてすべてお出しください。

枚数ではなく、橋が架かるかどうかです。
あきらめる前に、一度ご相談ください。

042-714-7747 事前診断・問合せフォームへ

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