はじめに:「伝統的鑑定」を否定する彼らもまた、穴だらけである
最近、ネット上で「伝統的な筆跡鑑定(勘と経験)はダメだ。これからは数値解析だ」と主張する業者の記事をよく見かけます。
彼らの主張は一見、理にかなっているように見えます。「主観」を排除し、「数値」や「顕微鏡」を使うと言われれば、一般の方は「これが科学的な鑑定なんだ!」と信じてしまうでしょう。
しかし、私が開発した「脳科学的筆跡鑑定法(BSHAM)」の視点から彼らの主張を分析すると、そこには「科学っぽく見せかけただけの、重大な欺瞞」が隠されていることがわかります。
今回は、ある業者の解説記事を例に挙げ、その「もっともらしい嘘」を4つのポイントで完全論破します。
欺瞞①:「数値解析」の正体は、ただの「形合わせ」
業者はこう主張します。
「長さ・角度・面積などを数値化し比較観察するから、ごまかせない」
【BSHAMによる論破】 「数値を測る=科学的」というのは大きな間違いです。彼らが一生懸命測っているのは、あくまで「紙に残されたインクの形(幾何学)」に過ぎません。
- 彼らの限界: 偽造者がライトテーブルを使って透かして書いたり、何度も練習して形を似せたりすれば、長さや角度の数値は簡単に一致してしまいます。
- 真実: 形(ジオメトリ)を数値化しても、偽造は見抜けません。見るべきなのは「形」ではなく、その線を書かせた「脳の運動指令(ダイナミクス)」です。BSHAMはここを見るため、形がそっくりな偽造筆跡も「別人の運動」として見抜くことができます。
欺瞞②:「マイクロスコープ」を使えば分かるという錯覚
業者はこう主張します。
「高精度な電子顕微鏡を使って…極めて高い確率で見破ることができる」
【BSHAMによる論破】 これは典型的な「機材自慢」による権威付けです。 マイクロスコープで見えるのは「インクの乗り方」や「微細な汚れ」だけです。
確かに「ゆっくりなぞった痕跡(トレス)」なら見えるかもしれません。しかし、「熟練した偽造者が、迷いなくスムーズに書いた文字」の場合、マイクロスコープは何の役にも立ちません。 「高価な機械を持っていること」と「正しい解析ロジックを持っていること」は、全く別の話です。
欺瞞③:「静止画」から「リズム」が見えるという嘘
業者はこう主張します。
「筆跡鑑定では、リズムや速度など、さまざまな要素を分析します」
【BSHAMによる論破】 物理的にあり得ません。彼らは「書き終わった文字(静止画)」を見ているだけです。そこには「時間」の情報は残っていません。
彼らが言っている「リズム分析」とは、「線が擦れているから速く書いたのだろう」という「推測(感想)」に過ぎません。 BSHAMだけが、文字の痕跡から逆算して「脳の運動モデル」を構築し、当時の執筆速度や空中の動きを「科学的に推定」することができます。彼らのリズム分析は、科学的根拠のない想像です。
欺瞞④:「警察の実績」=「科学的証明」ではない
業者はこう主張します。
「当社は裁判所、官庁、警察庁などから依頼を受ける機関です」
【BSHAMによる論破】 これが最大の罠です。「警察から依頼が来る」ことは、その手法が「科学的に正しいこと」の証明にはなりません。
以前の記事でも触れましたが、現在の公的機関やAIですら、ネット上の古い情報や前例踏襲のバイアスに支配されています。彼らが選ばれているのは、「今までずっと発注してきたから(伝統的鑑定よりはマシだから)」という理由に過ぎません。 「権威」を笠に着て、ロジックの不完全さを隠そうとする姿勢こそ、科学者として最も不誠実な態度です。
結論:それは「レベル2」の鑑定に過ぎない
筆跡鑑定には3つのレベルがあります。
- レベル1(伝統的鑑定): 「似ている気がする」(論外)
- レベル2(数値解析): 「形(長さ・角度)が同じだ」(今回の業者。見せかけの科学)
- レベル3(BSHAM): 「脳の運動プログラムが一致する」(本物の科学)
今回取り上げた業者は、レベル1を否定することでレベル2を「最先端」に見せていますが、本質的には「形の模倣」を見抜けない不完全な技術です。
「数値」や「顕微鏡」という言葉に惑わされないでください。 「なぜその文字になるのか(脳のメカニズム)」まで踏み込んだ鑑定でなければ、現代の巧妙な偽造を見抜くことはできません。



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