筆跡鑑定の裏側:「企業秘密」という言葉のワナ

所長コラム

筆跡鑑定を依頼しようとウェブサイトを見ると、「科学的な手法」「独自のデータベース」「統計的な分析」といった言葉が並んでいます。しかし、その根拠となるデータベースの規模や収集方法については、ほとんど明かされていません。

「それは企業秘密です」

そう言われると、私たちは「なるほど、それなら仕方ない」と納得してしまいがちです。しかし、この「企業秘密」という言葉の裏には、大きなリスクが潜んでいることをご存知でしょうか。


「企業秘密」という言葉がはらむリスク

1. 情報の非対称性:消費者はカモにされる?

鑑定所は鑑定方法に関する膨大な情報を持っていますが、依頼者である私たちはその専門知識を持ち合わせていません。この情報の差を悪用し、実体のない「科学的」という言葉で顧客を欺くことができてしまいます。

  • リスクの例:
    • 「独自のデータベースで分析します」と謳いながら、実際は個人の経験則に頼っている。
    • 専門用語を並べ立てて、中身のない鑑定書を作成する。

2. 空虚な信頼性:言葉に騙されていませんか?

私たちは「企業秘密」という言葉を聞くと、「きっとすごい技術なんだろう」「真似できない特別なノウハウがあるに違いない」と、無条件に信頼してしまう傾向があります。しかし、その実態は誰も確認できません。結果として、言葉だけの信頼性に惑わされ、質の低い鑑定を依頼してしまう危険性があります。

3. 法廷での証拠能力:役に立たない鑑定書?

筆跡鑑定書が法廷で証拠として認められるためには、その科学的根拠が問われます。 データベースの存在やその科学的な妥当性が証明できなければ、鑑定結果は単なる「鑑定人の個人的な意見」と見なされ、裁判の判断材料にならないこともあります。もしそうなれば、鑑定費用が無駄になってしまうだけでなく、裁判の行方にも悪影響を及ぼす可能性があります。


信頼できる鑑定所を見分ける3つのポイント

「企業秘密」という言葉のワナにはまらないために、依頼する前に以下の3つのポイントを確認しましょう。

1. 鑑定方法を具体的に説明しているか?

「筆圧の強弱」「文字の傾き」「筆順」など、鑑定においてどのような指標を分析するのかを可能な範囲で明確に説明している鑑定所を選びましょう。

2. 実績や鑑定事例を公開しているか?

過去にどのような案件で鑑定が採用されたか、匿名化した鑑定事例を公開している鑑定所は、実績に自信がある証拠です。

3. 質問に誠実に答えてくれるか?

「データベースの規模はどのくらいですか?」「どのようにデータを収集しましたか?」といった質問に対し、「企業秘密です」と一言で片付けず、可能な範囲で誠実に回答してくれるかを確認しましょう。

本当に信頼できる鑑定所は、企業秘密を守りながらも、顧客からの信頼を得るために、可能な限り透明性を確保しようと努力しています。もし鑑定方法やその根拠について質問しても曖昧な回答しか得られない場合は、慎重になった方が賢明かもしれません。

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