【筆跡鑑定のプロが明かす】「筆跡のブレ」に隠された、驚きの真実

所長コラム

「あの人のサイン、いつもちょっと崩れているけど、あれで本当に本人だとわかるの?」

筆跡鑑定と聞くと、完璧に一致する筆跡を探すイメージがあるかもしれません。しかし、プロが本当に見ているのは、その「ブレ」の中に隠された、あなただけの個性です。

今回は、一見すると無意味な「筆跡のブレ」が、なぜ鑑定の鍵となるのか、その驚くべき真実を解説します。


筆跡鑑定の核心は「恒常性」を見抜くこと

私たちが文字を書くとき、手の癖や長年の習慣が無意識に反映されます。そのため、どんなに注意深く書いても、完璧に同じ筆跡を2度書くことはできません。

しかし、この「ブレ」のパターンは、その人の中で常に一貫しているという事実にプロは注目します。この一貫性を、専門用語で「恒常性(consistency)」と呼びます。

筆跡鑑定は、この恒常性の有無によって、筆跡のブレを2つの種類に分類することから始まります。


あなただけの「恒常性のあるブレ」とは

これは、書く度に繰り返し現れる、あなただけの書き癖です。このブレは、筆者の運動習慣に根ざしているため、筆記具や書く状況が変わっても、そのパターンは驚くほど一貫して現れます。

【比較から見抜くプロの目】

たとえば、ある人の「い」という字を、異なる時期に書かれた複数の手書きメモで比べてみましょう。

  • 「い」の1画目と2画目の隙間:何度書いても、同じようにわずかな隙間が空いている。これは、書き始めと書き終わりの筆圧が、その人特有のパターンで安定している証拠です。
  • 「口」の字の閉じ方:右下の角が、どんなに丁寧に書いても、いつも少しだけ開いてしまう。これは、ペンを紙から離すタイミングが無意識のうちに決まっているからです。

これらの一貫した「ブレ」こそが、その人固有の筆跡を特定する最も重要な根拠となります。


なぜ「偶発的なブレ」は無視されるのか?

一方、恒常性のないブレは、ペン先のインクのかすれや、書いている途中に手がぶつかるといった偶発的な要因で生じる不規則な変動です。

これらのブレは、その時限りの現象であり、筆者の書き癖とは無関係な「ノイズ」です。もし鑑定人が、このノイズを「筆者の個性だ」と誤解して分析してしまうと、鑑定結果は信頼性を失ってしまいます。鑑定の目的は、あくまで筆者の書き癖を特定することにあります。


筆跡鑑定の真実

筆跡鑑定は、単なる「形の一致探し」ではありません。それは、徹底的な比較によって、偶発的なノイズを排除し、その人だけに共通する「恒常性のあるブレ」のパターンを見つけ出す、極めて奥深く、緻密な科学なのです。

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