BSHAMに「完成」という終着点はありません。科学者として、あえて今、さらなる高みへの課題と向き合います。

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はじめに:科学に「終わり」はない

これまで当ブログでは、私が開発した脳科学的筆跡鑑定法「BSHAM」が、従来の経験や勘に頼る鑑定法とこれほどまでに違うのか、なぜ裁判所(仙台高裁など)で証拠として採用されるに至ったのか、その革新性についてお伝えしてきました。

おかげさまで、多くの法律家の先生方や依頼者様から「これが本物の科学鑑定だ」との評価をいただき、現時点において、BSHAMは実用レベルにある世界最高峰の筆跡鑑定法であると確信しています。その成果には開発者として強い自負を持っています。

しかし、私はここで満足して立ち止まるつもりは毛頭ありません。

なぜなら、真の「科学」とは、常に現在の理論を疑い、検証し、更新し続けるプロセスそのものだからです。「これで完璧だ、完成だ」と慢心し、思考を停止した瞬間、それは科学ではなく、ただの「ドグマ(凝り固まった信条)」に成り下がります。残念ながら、現在の日本の筆跡鑑定業界には、何十年もアップデートされていないドグマが蔓延しています。

BSHAMは、今のままでも十分に裁判の証拠として耐えうる強固なレベルにあります。ですが、科学者としての私はあえて言います。BSHAMに「完成」という終着点はありません。

将来、私の鑑定書が法廷に出された際、相手方の弁護士や、旧態依然とした鑑定人から、重箱の隅をつつくような「反論書」が出されることもあるでしょう。

そうした事態も見据え、今回は科学者としての誠意、そしてさらなる高みを目指す意志を示すため、あえて今、BSHAMが向き合うべき「残された課題」について、包み隠さずお話ししたいと思います。


現状におけるBSHAMの課題

私が認識している、さらなる進化のための課題は、主に以下の2点です。これらは、従来の「なんとなく似ている」というレベルの鑑定法では、そもそも認識すらできない、非常に高度な次元の課題です。

課題①:「特殊な筆記状態」における検証データのさらなる蓄積

BSHAMは、脳の無意識的な運動制御モデルに基づいています。健常者が一般的な環境下で筆記した場合、その個人の癖は極めて高い精度で特定可能です。

しかし、現実の事件現場では、常に万全の状態で文字が書かれるとは限りません。

  • 命の危険を感じるほどの極度の緊張・恐怖状態
  • 泥酔や薬物の影響下
  • 脳梗塞やパーキンソン病といった、運動機能に影響を与える疾患を患っている場合
  • 利き手ではない手で書かざるを得なかった状況

こうした「特殊なノイズ」が混入する状況下において、脳の運動制御コマンドがどのように歪み、それが筆跡にどう現れるのか。

現在のデータベースでも一定の判断は可能ですが、より科学的な厳密さを追求するためには、こうした特殊状況下のデータをさらに蓄積し、「どこまでが判定可能で、どこからが判定不能(エラー)となるか」の境界線を、厳密な統計学的エビデンスに基づいて明確化していく必要があります。

課題②:数理モデルのさらなる精緻化

BSHAMでは、複数の筆跡特徴が偶然に一致する確率を計算する際、「積の法則」という強力な数学的武器を使用します。これが客観性の担保となっています。

この法則は「それぞれの特徴が互いに独立している(影響を与え合わない)」ことが前提となります。現状のモデルでも実用上は十分な精度が出ていますが、私はさらにその先を見ています。

人間の複雑な身体運動において、例えば「筆圧の強さ」と「運筆の速度」は、本当に完全に独立していると言い切れるのか? 微細な相関関係(相互作用)があるのではないか?

もし微細な相関があるのであれば、それを無視せず、より複雑で現実に即した高度な数理モデルへと、計算式をアップデートしていく余地が残されています。ここまで突き詰めてこそ、真の科学鑑定と言えるはずです。


結び:課題があるからこそ、最強の鑑定法へ進化できる

自らの理論の「課題」を公表することに、驚かれる方もいるかもしれません。ニセ科学の業者は、口が裂けても自社の弱点など言わないからです。

しかし、私はこれらの課題を「欠点」とは捉えていません。これらはすべて、BSHAMがより完璧なものへと進化するための「伸びしろ」です。

完璧ではないと知っているからこそ、研究を続けられる。課題が見えているからこそ、改善できる。

これらの課題を一つひとつクリアにしていくための、私の具体的な取り組み姿勢については、次回の記事で詳しくお話ししたいと思います。

批判や反論を恐れず、むしろそれらを糧にして、BSHAMはこれからも進化し続けます。日本の司法に、真の科学を根付かせるために。

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