「この筆跡は、なんとなく抑揚がないですね」 「全体的に、筆勢が弱いですね」
従来の筆跡鑑定書には、このような言葉が頻繁に出てきます。 しかし、私は長年、この言葉に違和感を抱き続けてきました。「抑揚がない」とは、具体的にどういう状態なのか? それは科学的に証明できるのか? と。
その答えを、物理学とAIの視点から解き明かし、私が新たに定義した概念。 それが「作為的連綿肥厚(さくいてき・れんめん・ひこう)」です。
今日は、BHSAM™(脳科学AI筆跡鑑定)における最重要概念の一つである、この現象について解説します。
「つながり線」は、本来見えないはず
行書などで見られる、文字と文字をつなぐ線(連綿線)。 皆さんが自然に文字を書くとき、この部分はどのくらいのスピードで書いていますか?
おそらく、「最速」で書いているはずです。 次の文字へ移動するために、ペンが空中を飛ぶような感覚で走る場所。それが連綿線です。
本来であれば、ペン先が高速で移動するため、インクが紙に落ちる暇がなく、線は「細く、薄く、かすれた状態」になります。これが、脳の運動プログラムに従った「本物の筆跡」です。
偽造犯が陥る「インクの罠」
しかし、他人の文字を真似ようとする偽造犯は違います。 彼らは、つながり線さえも「文字の一部(図形)」として認識し、目でじっくり追いながら書いてしまいます。
すると、どうなるか?
本来なら高速で駆け抜けるべき場所を、ゆっくりとなぞってしまうのです。 ゆっくり書けば、当然ペン先からインクがドボドボと溢れ出し、紙に深く染み込みます。
その結果、本来は細くなるはずのつながり線が、文字の本体と同じくらい「太く、濃く」なってしまいます。
私は、この物理現象を「作為的連綿肥厚(Artificial Thickening)」と名付けました。 「抑揚がない」という主観的な感想ではなく、「速度低下によってインクが物理的に堆積した状態」と定義したのです。
ホースの水撒きで考えれば分かる
イメージしやすいように、庭の水撒き(ホース)で例えましょう。
- 走って撒く(本物): 地面は少し濡れる程度です(線が薄い)。
- 歩いて撒く(偽物): その場所に水たまりができます(線が太い)。
AIはこの「水たまり(インクの量)」をミクロン単位で計測します。 文字本体の太さと、つながり線の太さが「1:1(同じ太さ)」であった場合、それは物理的に見て「書いたのではなく、ゆっくり描いた」という動かぬ証拠になります。
「感想」から「科学」へ
これまでの鑑定家が「筆勢が弱い」と感覚的に呼んでいたものの正体は、実はこの「インクの異常な堆積」だったのです。
私の研究所では、これを「なんとなく」ではなく、流体力学の数式を用いて証明します。
「あなたの筆跡は、つながり線のインク濃度が異常値を示しています。これは物理的に、なぞり書き以外では発生し得ない現象です」
このように断言できるのは、この概念を定義し、数値化することに成功したBHSAM™だけです。 もし、他社の鑑定で「グレーゾーン」とされたり、納得のいく説明が得られなかったりした場合は、ぜひ私にご相談ください。その線に残された「物理的な矛盾」を、科学の力で暴いてみせます。


