新時代の筆跡鑑定:脳科学が解き明かす「書く」という記憶

所長コラム

筆跡鑑定と聞くと、多くの人は「字の形が似ているか」を調べる古い技術を想像するかもしれません。しかし、今、脳科学の知見を応用した新しい筆跡鑑定法が注目を集めています。これは、単に見た目を比較するだけでなく、「書く」という行為に隠された、あなたの脳の記憶を読み解く画期的な方法です。


なぜ脳科学が筆跡鑑定に役立つのか?

私たちは無意識のうちに、自転車に乗ったり、楽器を演奏したりするのと同じように、文字を書く動作を身体に覚え込ませています。これを「手続き記憶」と呼びます。

脳に刻まれたこの記憶は、人それぞれ異なる癖や特徴、つまり「筆跡個性」として現れます。この新しい鑑定法は、この脳と筆跡の関係を深く掘り下げます。

  • 本人の筆跡個性がない: 鑑定資料に、本人なら必ず現れるはずの筆跡個性が見られない場合、それは他人が書いた可能性を示唆します。
  • 模倣の失敗(ゲシュタルト崩壊): 偽造者が本人の筆跡を真似しようとしても、無意識の運動パターンは変えられません。そのため、不自然な線の抜け(欠画)や余分な線(増画)が生じることがあります。
  • 偽造者の筆跡個性の露呈: そして最も重要なのが、鑑定資料に本人とは全く異なる、一貫した筆跡個性が現れることがある点です。これは、偽造者が意識的に真似をしていても、無意識のうちに自分の「手続き記憶」に基づいた癖が出てしまうためです。

これらの要素が複数重なるほど、筆跡の信頼性は飛躍的に高まります。


この技術が社会を変える日

この鑑定法は、認知症と書字能力の解明など,さらに多くの筆跡鑑定の精度を高める手法の研究余地は十分にあること、そして法的に有効な手段となるための科学的な検証をこれからも行っていく所存です。もし確立されれば、犯罪捜査や民事訴訟で強力な証拠となり、多くの事件や問題を解決に導くことができるでしょう。筆跡鑑定の証拠能力は十分にあるという社会を目指していきます。

筆跡は、単なる情報の伝達手段ではありません。それは、私たちの脳に刻まれた、唯一無二の「記憶の痕跡」なのです。この新しい脳科学的筆跡鑑定法は、その痕跡を解き明かし、真実を明らかにする可能性を秘めています。

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