「真似て書けば似る」はもう古い!筆跡鑑定が科学で進化した話

所長コラム

「人の筆跡は真似て書けば似るから、鑑定なんて意味がない」。そう思っていませんか?

実は、現代の筆跡鑑定は、単に文字の形を見るだけの、昔ながらの手法とは全く違います。それはもはや、熟練の技ではなく、科学に基づいた鑑定へと大きく進化しているのです。

このブログでは、筆跡鑑定がどのように変わったのか、そしてなぜ「真似る」ことが通用しないのかを解説します。

昔ながらの「伝統的筆跡鑑定」の限界

これまでの筆跡鑑定は、鑑定人の長年の経験と勘に頼る側面が強く、筆跡の形や大きさ、配置といった「見た目」の類似性を主な判断材料としていました。

しかし、この手法には大きな弱点があります。

  • 主観性: 鑑定人の経験に左右され、判断基準が曖昧になることがある。
  • 偽造への弱さ: 熟練した偽造者は、見た目だけなら本物と見分けがつかないほど、精巧に真似ることができてしまう。

「真似て書けば似る」という言葉は、まさにこの伝統的な鑑定法の限界を指摘するものでした。

脳科学で解き明かす「書く」という行為

脳科学的筆跡鑑定は、この限界を乗り越えるために、筆跡を「脳が生み出す運動の痕跡」として捉えます。

これは、私たちが無意識に行う「手続き記憶」という能力に基づいています。自転車に乗ったり、楽器を演奏したりするのと同じように、文字を書くという動作も、長年の訓練によって脳に深く刻み込まれた、意識ではコントロールしにくい癖なのです。

この考え方に基づけば、鑑定のポイントは「文字の形」から「文字を書くプロセス」へと変わります。具体的には、以下の要素を複合的に分析します。

  • 筆圧の強弱: 文字を書く際の力の入れ方、抜き方の癖。
  • ストロークの速さ: 筆を動かすスピードやリズム。
  • 線の震えや滑らかさ: 細かな手の震えや、運筆の安定性。

これらの要素は、意識して真似することが非常に難しいため、偽造者が意図せず残してしまう**「本人だけの痕跡」**を明らかにすることができます。

なぜ、科学的筆跡鑑定は優れているのか?

伝統的な鑑定法と、科学的な鑑定法を比較すると、その違いは一目瞭然です。

伝統的筆跡鑑定科学的筆跡鑑定
鑑定の着眼点静的な文字の形動的な書く動作
鑑定の根拠鑑定士の経験と勘脳科学・運動学に基づくデータ
偽造への強さ巧妙な偽造に弱い筆者の無意識の癖を暴くため偽造に強い

現代の筆跡鑑定は、単なる主観的な判断から、客観的な科学データに基づく分析へと進化しました。この進化こそが、筆跡鑑定を法的な証拠能力を持つ信頼性の高い技術へと押し上げた最大の理由です。

「真似て書けば似る」という考えは、もはや過去のものです。現代の筆跡鑑定は、筆者の「脳の癖」までも見抜く、高度な科学技術なのです。

脳科学的筆跡鑑定法の考案、提唱者は二瓶淳一です。

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