「筆跡鑑定って、文字の形が同じかどうかを比べるんでしょ?」
そう思っている方がほとんどかもしれません。しかし、プロの筆跡鑑定士は、もっと深い部分、つまりあなたの「書き方」そのものを見ています。
今回は、画線の長さや角度といった形状を比較するのではなく、本人の筆跡個性が鑑定資料に出現しているかを調査するという、筆跡鑑定の真実を解説します。
なぜ「文字の形」を比べてはいけないのか?
同じ人が書いたとしても、文字の形や長さ、角度は簡単に変わってしまいます。
- 書く状況: 急いで書けば文字は崩れ、丁寧に書けば整います。
- 筆記具: 鉛筆と万年筆では、線の太さや質感が全く異なります。
- 体調: 疲れていれば、筆圧は弱くなり、線は不安定になります。
このように、文字の形といった表面的な特徴は、その時々の偶然に左右される「ノイズ」に過ぎず、鑑定の根拠にはなり得ないのです。
筆跡鑑定の核心:無意識の行動から生まれる「筆跡個性」
では、プロは何を見ているのでしょうか?
それは、書く人が無意識に行う独特な運筆の癖です。この癖は、長年の筆記習慣によって身についたもので、意識して変えることは非常に難しいものです。この書く度に一貫して現れる無意識のパターンこそが、筆跡鑑定の核心である「筆跡個性」です。
筆跡個性を見抜くプロの目
プロは、鑑定資料と対照資料を徹底的に比較し、この筆跡個性が両方の資料に出現しているかを調査します。
たとえば、ある人の「る」という字を鑑定する場合、プロは以下のような点をチェックします。
- 筆圧のパターン:筆記の速度がわずかに減速するタイミングで、筆圧が強くなるパターンが両方の資料に共通して見られるか?
- 筆記用具の動き:筆記用具が紙に触れる・離れるタイミングや、次の画への接続方法など、無意識の行動が一致しているか?
このように、筆跡鑑定は、目に見える形の一致ではなく、その背後にある筆者の行動パターンの一致を科学的に証明する、極めて緻密なプロセスなのです。
あなたの書く文字には、あなたの知らない「あなたらしさ」が詰まっています。そして、筆跡鑑定は、その真実を解き明かす奥深い科学なのです。


