✍️ 筆跡鑑定の常識を更新する:同筆と異筆は真逆のロジックで証明される

所長コラム

導入:従来の鑑定は「似ている=罠」の構造的脆弱性を抱えていた

長年にわたり、筆跡鑑定は「文字の形が似ているか」という類似性(形状比較)に頼ってきました。しかし、この手法は、「偽造者は本物に似せて書く」という単純な事実に直面すると、その鑑定結果が偽造者の技量に左右されるという非科学的な脆弱性を露呈しました。

従来の鑑定法には、その判断の根拠となる恒常性(書き癖の一貫性)を定量化する客観的な基準がなかったため、結論が曖昧で主観的にならざるを得ませんでした。

脳科学的筆跡鑑定法(BSHAM)は、この限界を克服するため、鑑定の目的(同筆か異筆か)に応じて、全く異なる二つの統計的ロジックを厳密に使い分けます。


1. 異筆の証明ロジック:追究するのは「無意識の裏切り」🔪(二項分布)

異筆(別人による筆跡)の証明は、「問題の筆跡が、本人の脳の運動プログラムから生まれたものではない」ことを証明することに特化しています。このロジックは、筆跡の希少性や模倣の巧拙は一切問いません。

焦点:本人なら必ず現れる癖の「崩壊」を定量化する

  1. 恒常性の客観的定義:まず、本人の筆跡(対照資料)を調査し、その特徴が75%以上の頻度で出現することを客観的な数値基準として定義します。この75%基準は、「鑑定人の主観を排除し、鑑定の根拠を統計的に保証する」ための判断境界線です。
  2. 偽造の兆候:恒常性の崩れ:偽造者が筆跡を模倣しようと意識的な介入を試みると、無意識の運動プログラム(手続き記憶)が阻害され、本来安定しているはずの恒常性が崩れるという決定的な兆候が現れます。
  3. 数学的保証:二項分布による証明:集積された「恒常性の崩れ」の数が、単なる偶然の変動ではありえないことを二項分布という統計ロジックで証明します。崩れが偶然起こる確率が危険率(通常 5%)を下回れば、鑑定資料は異筆(別人)であると客観的に断定されます。

💡 異筆証明は、偽造の「上手さ」ではなく、「無意識の習慣の破綻」という逃れられない事実を追究するため、鑑定結果が外部要因に左右されません。


2. 同筆の証明ロジック:追究するのは「偶然の排除」🔎(積の法則)

同筆(本人による筆跡)の証明は、「筆跡の一致が、単なる偶然の一致や模倣によって生まれたものではない」ことを数学的に保証するものです。

焦点:希少性の高い特徴を掛け合わせる

ここでは、誰もが書くありふれた特徴ではなく、希少性(珍しさ)の高い恒常的な特徴のみに焦点を絞ります。

  1. 希少な特徴の集積:筆者を特定する上で重要となる特異的かつ恒常的な筆跡個性を多数集積します。
  2. 保守的な確率の割り当て:個々の特徴が偶然一致する確率を、最も安全側の保守的な確率(例:50%)で設定します。これは、「その特徴が2人に1人が持つ、最もありふれたものだとしても」という、論理的な防御線です。
  3. 数学的保証:積の法則による裏付け:これら複数の特徴の偶然の確率を積の法則(掛け算)で統合します。これにより、鑑定結論の総合信頼度が最大99.9999%以上といった、極めて高い水準で保証されます。

💡 同筆証明は、「希少な恒常性の一致」を証明することで、模倣や偶然による誤認の可能性を統計的に無視できるレベルまで排除するのです。


結論:筆跡鑑定は「論理と統計」の科学へ

従来の筆跡鑑定法は、恒常性を定量化する客観的な基準を持たなかったため、その判断は曖昧で主観的にならざるを得ませんでした。

BSHAMは、証明の目的に応じて「恒常性の崩壊を追う二項分布」と「希少性の一致を追う積の法則」という、真逆のロジックを使い分けることで、鑑定の科学的信頼性を確保します。

鑑定を依頼する際は、その鑑定が「証明の目的ごとに異なる統計ロジックを明確に採用しているか」を必ず確認してください。それが、あなたの抱える問題を解決に導く、揺るぎない科学的証拠となるでしょう。

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