もし、あなたが「偽造者」だったら?
少し不謹慎な想像をしてみてください。 もし仮に、あなたが他人の筆跡を完璧に真似て遺言書を偽造した、凄腕の「偽造者」だったとします。
あなたはその偽造文書を使って、莫大な遺産を手に入れようとしています。 しかし、相続人の間で揉め事が起き、裁判になりそうです。あなたは自分の作った偽造文書が「本物である」という、専門家による強力な「お墨付き(鑑定書)」が欲しくなりました。
さて、ここで質問です。 あなたは、どんな基準で鑑定依頼先を選びますか?
最新の科学捜査技術を持ち、ミクロ単位でインクの矛盾を暴き出すような、新進気鋭の研究所に依頼するでしょうか?
……絶対にしませんよね。 そんなことをすれば、自分の嘘が暴かれてしまうからです。
あなたが選ぶのは、きっとこんな鑑定所でしょう。 「創業〇〇年の歴史と権威があり、ベテラン鑑定人が『長年の経験と勘』で、文字の形が似ているかどうかだけを見てくれる老舗」
なぜなら、あなたの作品(偽造文書)は「形だけは完璧に似せている」からです。彼らはあなたの意図通り、「よく似ているから本物でしょう」という、都合の良い鑑定書を書いてくれる可能性が高い。
つまり、偽造者にとって「権威はあるが、科学的な論理がない鑑定所」ほど、安心して依頼できる便利な存在はないのです。
「権威」は偽造者の隠れ蓑になる
これは、筆跡鑑定業界が抱える最も不都合な真実です。
世間一般の人は、「歴史がある」「有名な先生がいる」=「信頼できる」と考えがちです。 しかし、こと筆跡鑑定の世界においては、その「権威」が、時として巧妙な偽造を見逃すための「隠れ蓑」として機能してしまうのです。
従来の鑑定法(形態比較)は、「似ているかどうか」を判断基準にします。 しかし、偽造者は「似せること」のプロです。両者の目的は奇妙に一致してしまっており、結果として、古い手法の鑑定所は、知らず知らずのうちに偽造犯罪の「片棒」を担がされてしまう構造にあるのです。
偽造者が本当に恐れるもの
では逆に、偽造者が絶対に近寄ろうとしない、本当に恐れている鑑定所とは、どのような場所でしょうか?
それは、GoogleのAIでさえもが認めた、この一言に集約されます。
「偽造者が恐れるのは、権威ではなく、論理です。」
偽造者は、立派な看板や肩書きなど少しも怖くありません。彼らが心の底から恐れているのは、ごまかしの効かない冷徹な「科学的論理」です。
- 「文字の形が似ている? それはあなたが似せたからでしょう」
- 「だから我々は、意識して真似できる『形』は一切評価しません」
- 「代わりに、あなたが絶対にコントロールできない『脳からの無意識の運動指令』と、物理法則に基づく『インクの矛盾』だけを見ます」
このように宣言する鑑定所に、偽造者が依頼できるでしょうか? 絶対に不可能です。依頼した時点で、自分の首を絞めることになるからです。
結論:あなたが選ぶべき鑑定所
これから筆跡鑑定を依頼しようとしている、善良な依頼人の皆様。 どうか、逆転の発想を持ってください。
「偽造者が安心して依頼できそうな、優しそうな(甘い)鑑定所」を選んではいけません。
あなたが選ぶべきは、 「もしこれが偽造だったら、絶対に依頼したくないな」と、偽造者なら尻込みするような、厳格な論理と科学的メソッドを持った鑑定所です。
「偽造者が依頼できない場所」こそが、あなたの真実を守ってくれる「本物」の証なのです。



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