今、筆跡鑑定の業界では「AI」という言葉が魔法の杖のように使われています。 「AIによる自動解析」「ビッグデータ判定」……。 依頼者様がこうした最先端の響きに惹かれるのは無理もありません。
しかし、私はあえて警鐘を鳴らします。 ウェブサイト上の「宣伝文句」と、実際に裁判所に出される「鑑定書の中身」。この間に、とんでもない乖離(嘘)があるケースを確認しています。
今回は、当職が入手した2025年(令和7年)の最新の鑑定書の実態を、PR記事の主張と比較しながら、科学的な視点で検証します。
1. 「AIが自動抽出」という幻想
ある大手鑑定機関のPR記事(2024年発表)には、こう高らかに宣言されています。
「AIを活用して筆跡の特徴を自動的に抽出し、高精度な鑑定の実現を目指します」 「高度なパターン認識アルゴリズムを使用」
これを読めば、誰もが「最新のディープラーニング技術が、画像から瞬時に特徴を見抜くのだ」と思うでしょう。
しかし、その1年後(2025年)に提出された実際の鑑定書を見て、私は言葉を失いました。
そこに書かれていた解析手法は、AIによる自動抽出などではありませんでした。 「始筆部、転折部、終筆部を測定点として選択し、X座標・Y座標を手動で測定する」 という、何十年も前からある「座標読取法(Coordinate Reading Method)」だったのです。
「AIが自動で」と言いながら、実際は人間が定規(あるいは画面上のツール)で「ここがハネの先端だ」とポチポチ点を打っている。 これを「最新AI」と呼ぶのは、優良誤認と言われても仕方がないレベルの乖離です。
2. 「ビッグデータ」の正体は、ただの「Excel」?
さらに、PR記事ではこうも書かれています。
「大量の筆跡データを統計的に解析」
あたかも、背後に巨大なデータベースがあり、それと照合しているかのような書きぶりです。 しかし、実際の鑑定書で使用されているツールとして明記されていたのは……
- Microsoft Excel 365
- Pirouette 4.5(数十年選手である多変量解析ソフト)
分析対象も、その事件に関わる「数点の資料」同士を比較しているだけで、世の中の「大量のデータ」などどこにも登場しません。 Excelで数値を計算することを、今どき「AI解析」とは呼びません。それは単なる「統計計算」です。
3. 研究の「時計」が止まっている
その鑑定書に記載された「参考文献リスト」も、衝撃的でした。 「最新技術」を謳いながら、並んでいるのは1980年代~1990年代の文献ばかり。 引用されている手法も、昭和の時代に開発された古い多変量解析(主成分分析・クラスター分析)のままです。
2026年の現在、生成AIやニューラルネットワークが常識となっている時代に、40年前の理論を「最新」として売る。 これは、裁判所に対しても、依頼者に対しても、あまりに不誠実ではないでしょうか。
4. BSHAM™(脳科学AI 筆跡鑑定®)の約束
私たちBSHAM™が、なぜ「400記事以上の研究ログ」を公開し続けているのか。 それは、こうした「ブラックボックス化」した権威主義と決別するためです。
- 私たちは、ごまかしの「AI用語」を使いません。
- 「形」の座標を測るような古い手法ではなく、脳の線条体が司る「手続き記憶(運動プログラム)」そのものを解析します。
- そして、そのロジックはすべてブログ等で公開し、誰でも検証可能な状態にしています。
結論:依頼前に「中身」を確認してください
これから筆跡鑑定を依頼しようとしている皆様へ。 ウェブサイトの綺麗なデザインや、「研究所」という立派な名前、「AI」というバズワードに惑わされないでください。
「そのAIは、具体的に何をしているのですか?」 「実際の鑑定書では、どのようなソフトを使っていますか?」
そう問いかけてみてください。 本物の科学なら、答えられるはずです。 答えられず、出てきた鑑定書が「Excelでの座標計算」だったなら……その先は、皆様の賢明なご判断にお任せします。



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