遺言無効確認訴訟というと、巨額の遺産をめぐる「お金持ちの争い」を思い浮かべるかもしれません。確かに、そうしたケースはありますが、実は1,000万円以下の財産をめぐる訴訟も珍しくありません。
資産家であれば、たとえ訴訟に負けても生活が脅かされることはないでしょう。しかし、一般市民にとって、訴訟費用や鑑定費用は大きな負担です。
偽造とわかっていても訴訟に踏み切れない現実
以前、遺言書の筆跡が明らかに違うと悩んでいる方から相談を受けました。その方は、もし訴訟に負ければ、多額の費用を借金で賄わなければならない状況でした。
「こんなに筆跡が違うのに、裁判所は『本人の筆跡』と判断することもあるのですか?状況証拠はほとんどなく,筆跡が大きく違うことが唯一の証拠だと思っています。」と尋ねられました。
私は正直に答えました。「裁判官によっては、筆跡鑑定の内容の如何にかかわらず,証拠能力は低いと判断される可能性があります。たとえ鑑定で偽造と証明されても、裁判所がそれを重視しないこともあるからです。弁護士の方と他の証拠も含めてよく相談してください。」と。『筆跡が大きく違っていても,真筆と判断されることがある』残念ながらこれが現実なのです。
これは実際にあった話です。裁判官は、筆跡鑑定の結果だけでなく、遺言書が作成された状況など、他の証拠をより重視する傾向があるためです。
最終的に下された決断
私の話を聞いた後、その方は弁護士と再度相談し、最終的に「今回は訴訟を起こさない」という決断をされました。
「筆跡鑑定が軽視される可能性があるなら、生活に影響するようなお金をかけることはできない。」と話されていました。
偽造とわかっていても、訴訟にかかる費用や、勝てるかどうかわからないリスクを考えると、泣く泣く諦めざるを得ない現実があるのです。
遺言無効確認訴訟の難しさ
この経験から、遺言無効確認訴訟の難しさを改めて痛感しました。遺言書に疑問がある場合、安易に訴訟に踏み切るのではなく、筆跡鑑定の説得力や、費用に見合う効果があるのか、そして勝訴できる可能性を冷静に検討することが非常に重要です。
筆跡鑑定の信用性が低くなっている現状は、私自身も危機感を持っています。これでは、遺言書が無効だと確信していても、状況証拠がなければ訴訟を起こせないことになりかねません。
財産の多寡にかかわらず、遺言無効確認訴訟は当事者の人生に大きな影響を及ぼします。訴訟を起こす前に、専門家とよく相談し、費用やリスクを慎重に考えることが大切です。
遺言書について不安に思っていることはありますか?


