「科学的に証明されました」。
テレビドラマやニュースで、そんな言葉を耳にしたことはありませんか? 筆跡鑑定もその一つ。「科学」という言葉を聞くと、なんとなく安心感を覚えるかもしれません。しかし、その「科学的」な鑑定方法が、本当にあなたの人生を左右する鑑定結果に値するのか、立ち止まって考えてみることが大切です。
この記事では、多くの筆跡鑑定で用いられる「数値解析法」に潜む、知られざる問題点と、本当に信頼できる鑑定を見極めるためのヒントを、分かりやすくお伝えします。
「科学的」の裏側にある「ブラックボックス」
筆跡鑑定に用いられる数値解析法は、筆跡の線幅や傾き、筆圧などを数値化し、統計的に分析する手法です。一見すると、非常に客観的で信頼できるように思えます。しかし、その根幹には「ブラックボックス」が存在します。
例えば、
「鑑定の結果、この筆跡は90%の確率で同一人物のものです」
と言われたとします。では、なぜ「90%」なのでしょうか?
- なぜその「90%」という閾値(いきち)が設定されたのか?
- どういった根拠で、その数値が「同一人物」と判断する基準になったのか?
実は、この閾値の根拠が、鑑定機関によって異なる場合が多く、その詳細が公開されていないことが多々あります。つまり、「科学的」という言葉の裏で、その判断基準が不透明なままなのです。
事例で見る、サンプル数の重要性
数値解析法を精度高く行うには、「十分なサンプル数」が必要不可欠です。専門的な研究では、正確な変動幅をつかむために30個以上の筆跡サンプルが望ましいとされています。
しかし、実際の鑑定ではどうでしょうか?
「この遺言書が本当に父が書いたものか、調べてほしい」
という依頼があったとします。この場合、比較できる父の筆跡は、手紙やメモ書き、せいぜい数枚しか見つからないことがほとんどです。
【事例】 ある鑑定で、比較のために用意された筆跡は、わずか5枚のメモ書きだけでした。
この5枚の筆跡から、父の筆跡の「癖」や「変動幅」を正確に読み取ることは、非常に困難です。5枚のサンプルで「90%の確率で同一人物」という結論が出たとしても、それは本当に信頼できる結果でしょうか?
サンプル数が少ない鑑定は、筆跡の個性を正確に捉えきれず、偶然の一致を見落としてしまうリスクをはらんでいます。
筆跡鑑定の透明性を高めるために
では、私たちはどうすれば、信頼できる鑑定を選ぶことができるのでしょうか?
1. 鑑定のプロセスを確認する 鑑定を依頼する前に、どのような手法を用いるのか、また、どのようなデータや根拠に基づいて結論を出すのか、担当者に詳しく尋ねてみましょう。不明確な点があれば、納得できるまで質問することが大切です。
2. サンプル数の重要性を理解する 鑑定を依頼する際は、できるだけ多くの比較資料を準備するようにしましょう。サンプル数が少ない鑑定が避けられない場合でも、その限界点をしっかりと理解しておくことが、不当な判断を防ぐ第一歩になります。
3. 「客観性」と「正当性」のバランスを見極める 数値解析法は「客観的」なデータを提供しますが、そのデータが正しいかどうかを判断するのは、経験豊富な鑑定人の役割です。客観性だけでなく、鑑定士がどのような論理で結論を導き出したのか、その正当性をしっかりと説明してもらうことが重要です。
最後に
筆跡鑑定は、あなたの人生に深く関わる可能性があります。
「科学的」「客観的」という言葉に惑わされず、その裏側にあるプロセスや根拠をしっかりと見つめる目を持つことが、自分自身を守ることにつながります。
鑑定の依頼を検討されている方は、ぜひこれらのポイントを参考に、ご自身の納得のいく鑑定機関を探してみてください。


