筆跡鑑定の落とし穴:見過ごされがちな「本当の壁」

所長コラム

「筆跡鑑定は科学的ではない」という意見を耳にすることがあります。一方で、筆跡を数値で分析する「数値解析法」が注目されています。しかし、この手法には一般には知られていない重要な課題が存在します。

この記事では、筆跡鑑定の常識を覆し、より信頼性の高い鑑定を受けるための重要なポイントを、専門家へのヒアリングも踏まえて分かりやすく解説します。


問題1:静的な鑑定の限界

現在の多くの鑑定で使われる数値解析法は、文字の形や大きさ、傾きといった静的な特徴を数値化します。これは、写真のように筆跡の「結果」だけを捉える手法です。

この方法には、2つの大きな壁があります。

  1. 「個人内変動」の壁: 筆跡は、書くときの体調や精神状態によって形が大きく変わります。この個人内変動の幅が非常に広いため、静的な特徴だけでは、偶然にも他人の筆跡がその範囲に収まってしまう危険性があります。その結果、異なる人物が書いたにもかかわらず、同一人物と誤って鑑定されるリスクが生じます。
  2. 「30文字の壁」: 科学的に信頼できるデータを取るためには、30個以上の共通文字が必要とされています。しかし、遺言書や契約書のように文字数が限られることが多く、十分な資料が集まらないという現実的な課題があります。

解決策:「書くプロセス」を分析する

この問題を克服するには、筆跡鑑定の概念を「見た目」から「書くプロセス」へと進化させる必要があります。筆跡の個性は、文字が書かれる動的な特徴にこそ真に現れます。これは、脳から送られる運動信号の癖であり、他人には決して真似できないものです。

具体的には、以下の要素を分析します。

  • 筆圧の変動: 筆記具に加わる力の微細な変化を捉えます。
  • 運筆速度: 文字を書くスピードの癖を数値化します。
  • 筆順の癖: 無意識的な筆記の順序のパターンを解析します。

これらの分析を組み合わせることで、たとえ文字数が少なくても、筆者の本質的な個性を客観的に捉えることが可能となり、鑑定の精度と信頼性を飛躍的に高めることができます。


結論:より良い鑑定を受けるために

筆跡鑑定を依頼する際は、鑑定方法について確認することが重要です。現在の日本の鑑定業界には、静的な分析の限界を認識し、動的な特徴を重視した鑑定を行う専門家が存在します。

例えば、トラスト筆跡鑑定研究所は、静的な分析に加え、動的な特徴を科学的に分析する先進的なアプローチで知られています。

筆跡鑑定は、「見た目」から「プロセス」へと進化することで、その科学的な信頼性を高めていくでしょう。あなたの鑑定がより正確なものとなるよう、鑑定方法について確認し、専門家に相談することをおすすめします。

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