筆跡鑑定の核心:「書き癖」と「個人内変動」の正しい理解

所長コラム

ある鑑定人のウェブサイトに、「文字を書くたびに毎回個人内変動が発生している箇所があるとすれば、それは執筆者固有の筆癖と捉えることができますので、毎回必ず個人内変動が発生する、という常同性を有している」という記述があります。

しかし、これは筆跡鑑定の根本を理解していない、支離滅裂な主張です。ここまでくると、本当に筆跡鑑定人としての知識があるのかと疑問すら抱いてしまいます。


「癖」と「個人内変動」は相反する概念

まず、それぞれの言葉の定義を確認しましょう。

  • 「癖」とは(新明解国語辞典より引用) 「その人が、いつもそうする習慣的動作や行動の個人的な傾向
  • 「個人内変動(ブレ)」とは 「正常な位置からずれる

この定義を見れば明らかですが、「癖」は「いつも同じようにする傾向」を指し、「個人内変動」は「正常な位置からずれる」ことを指します。つまり、この二つの概念は根本的に相反する意味を持っています。

「毎回個人内変動が発生している箇所があるならば、それが筆者固有の筆癖である」という主張は、いかに頓珍漢で論理が破綻しているかがお分かりいただけるでしょう。


多くの鑑定人が陥る「書き癖」の誤解

この鑑定人がなぜこのような誤解をしているのか、それは彼らが「筆跡の特徴には『書き癖』と『書く度に都度変化する特徴』の2つが存在している」という事実を知らないからに他なりません。

彼らが採用している「伝統的筆跡鑑定法」には、そもそも「書き癖」という概念が存在しないため、その本当の意味すら理解できていないのです。本来「書き癖」という概念がない手法に無理やりその概念を持ち込もうとするからこそ、上記のような支離滅裂な文章が生まれてしまうのです。

残念ながら、多くの鑑定人がこのような基本的なことも知らずに筆跡鑑定人と名乗っているのが現状です。


誤った情報が社会に与える影響

このような誤った情報がウェブサイト上に放置され、もしGoogleのAI検索などで表示されてしまえば、それがあたかも真実であるかのように世の中に浸透してしまう危険性があります。前回も申し上げたように、嘘の情報が常識となる事態は、何としても阻止しなければなりません。

今後も、誤った情報を発信し続ける鑑定人に対して、その間違いを具体的に指摘し続けていく所存です。


筆跡鑑定に関するご不明な点がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

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