「専門家が言うから正しい」は本当か? 信頼の鎖を断ち切るためのガイド

所長コラム

「あの有名弁護士がブログで推奨していたから安心だ」 「テレビに出ている専門家が言っていたから信じていた」

私たちは、こういった権威に裏打ちされた情報を、無意識のうちに信じがちです。しかし、その信頼が、意図せずして偽りの情報を広める「情報の鎖」になってしまうとしたら?

今回は、その危険なメカニズムを解き明かし、私たちが賢く情報を判断するための具体的な行動ガイドをお届けします。


偽りの情報の旅:3つの主体と無意識の連鎖

この問題は、まるで駅伝のように、3つの主体がバトンを渡していくことで情報が伝わります。しかし、最初のランナーが持つバトンは、実は最初から偽物なのです。

1. 最初のランナー:見せかけの専門家

旅の始まりは、過剰な主張をする事業者や個人です。彼らは、科学的根拠が乏しいにもかかわらず、自社サービスの優位性を印象付けようとします。

【事例】 ある筆跡鑑定サービス会社のウェブサイトには、「コンピュータを使い、目視ではなく数値に置き換えることで客観的な鑑定をいたします」と書かれていました。筆跡鑑定において何よりも重要なのは、その正答率(鑑定結果の正確さ)です。しかし、この会社は正答率ではなく「客観性」を前面に押し出すことで、消費者の関心をずらそうとしていました。彼らはコンピュータを使い、目視ではないから「客観的」という言葉の響きで、あたかも自社の鑑定が最も優れているかのように見せかけていたのです。

2. 中間の走者:信頼のスタンプを押す者

次に、その情報に「信頼のスタンプ」を押してしまうのが、社会的な地位を持つ専門家です。

【事例】 とある弁護士事務所の弁護士は、依頼者から急ぎで「筆跡鑑定の法的効力」について情報を求められていました。ネットで検索したところ、前述の筆跡鑑定サービス会社の記事が上位に表示されました。多忙な業務の中、自身の専門外の情報だったため、「専門家が語っているのだから」という先入観から、深く検証せずに「コンピュータで客観的な鑑定ができる」という内容を引用してしまいました。

弁護士は法律のプロですが、筆跡鑑定のプロではありません。この瞬間、彼らの社会的信頼が、偽りの情報に付与されてしまったのです。

3. 最後の走者:情報を広める者

そして、その情報をさらに多くの人に広めるのが、商業的な目的を持つメディアや企業です。

【事例】 電子署名関連の業者が、自社の広報資料で「筆跡鑑定の法的効力」について記事を作成する際、検索で見つけた弁護士事務所のコラムを参考にしました。担当者は「弁護士が認めている」という権威を利用すれば、説得力が増すと判断。こうして、最初の偽りの情報が持つ「虚偽性」は、完全に隠蔽されてしまいました


この連鎖を断ち切るための3つのステップ

この問題を解決するには、情報の流れに関わるすべての主体が、それぞれの責任を果たす必要があります。そして、何より重要なのは、情報の受け手である私たちが、「なんとなく」ではなく、意識的に情報を判断することです。

ステップ1:発信者の意図を疑う勇気を持つ

まず、情報が誰によって、何のために発信されているのかを常に考えましょう。

  • 情報の出所は信頼できるか? 企業のウェブサイトや広告記事は、集客が目的です。他の鑑定所の鑑定内容も吟味するなど、客観的な情報源と照らし合わせてみましょう。
  • 専門家としての裏付けは? 肩書きだけでなく過去の実績を調べ、本当にその分野のプロフェッショナルであるかを確認しましょう。

ステップ2:結論だけでなく、根拠を問い詰める

「〜は効果がある」といった結論だけでなく、なぜそう言えるのか、その科学的根拠やデータに目を向けましょう。

  • 具体的なデータはあるか? 科学的な主張であれば、その根拠となる科学的根拠が明記されているはずです。それが不明瞭な場合は、注意が必要です。
  • 他の専門家の意見は? その主張に議論の余地があるのかを調べてみましょう。一つの情報源を鵜呑みにせず、複数の意見を比較検討することが重要です。

ステップ3:常識と照らし合わせる習慣をつける

「必ず」「〜するだけで」といった断定的な表現には、特に注意が必要です。

  • 「〜するだけで、病気のリスクがゼロになる」
  • 「この工法を使えば、どんな家でも空気が完全に浄化される」
  • 裁判に勝てる鑑定書を作成

このような都合の良い話は、ほぼ間違いなく誇大な表現です。一歩立ち止まり、「本当にそんなことが可能なのか?」と自問する習慣をつけましょう。


まとめ

権威による情報の保証は、本来、私たちの判断を助けるためのものです。しかし、その鎖が虚偽の情報によって始まると、社会全体に大きな混乱をもたらします。

大切なのは、「誰が言っているか」ではなく、「何を、なぜ言っているか」を深く考える姿勢です。情報の洪水の中で、私たち自身の身を守り、より健全な社会を築くために、この3つのステップをぜひ明日から実践してみてください。

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