【プロの視点】「形」を真似ても「動き」はバレる。筆跡鑑定に『微分(数学)』が必要な理由

所長コラム

「筆跡鑑定」と聞いて、皆さんはどのような作業をイメージしますか?

おそらく、虫眼鏡を持って「文字の形」をじっくり見比べ、「ここが似ている、ここが違う」と判断する姿を想像されるのではないでしょうか。

もちろん、それも大切な作業の一部です。しかし、私たちが行っている「脳科学AI筆跡鑑定®(BSHAM™)」の世界では、形と同じくらい、あるいはそれ以上に「ある数学的な計算」を重要視しています。

それは、「微分(びぶん)」です。

「えっ、数学? 文字を見るのに関係あるの?」と思われるかもしれませんが、実はこれこそが、本物と偽物を見分けるための決定的な鍵なのです。今日はその理由を、できるだけ分かりやすくお話しします。

「地図」と「スピードメーター」の違い

筆跡鑑定における「微分」を理解するために、「車の運転」を想像してみてください。

例えば、あなたの家に、友人が車で遊びに来たとします。 あとで友人が通ったルートを地図上でなぞってみると、カーブも直線も、あなたの家までの道のり(軌跡)は一本の線で描かれます。

これが「文字の形」です。

しかし、地図上の線だけを見ても分からないことがあります。それは、「その時、どんな運転をしていたか?」です。

  • カーブの手前でスムーズに減速したか?
  • 直線で迷いなくアクセルを踏み込んだか?
  • それとも、道に迷ってノロノロ運転をしていたか?

地図(形)は同じでも、運転の「勢い」や「リズム」は全く違うはずです。 この「一瞬一瞬のスピードの変化」や「アクセルの踏み込み具合」を数値化して調べるのが、数学でいう「微分」の考え方です。

偽造犯は「形」しか真似できない

これを筆跡の話に戻しましょう。

誰かが他人のサインを真似して偽造しようとする時、その人は必死に「文字の形(地図)」をなぞろうとします。完成したサインをパッと見れば、形はそっくりかもしれません。

しかし、「書いた時のスピード(微分値)」までは絶対に真似できません。

  • 本人の筆跡: 書き慣れているため、無意識にペンが加速し、カーブでは滑らかに力が抜けます。脳内の運動プログラム通りに、スムーズな「速度の波」が生まれます。
  • 偽造の筆跡: 「形を似せなきゃ」と意識しながら慎重に書くため、本来なら速く書くべき線でスピードが落ちたり、不自然に一定の速度でゆっくり動いたりします。また、指先に「迷い」が生じ、目には見えない微細な震え(加速度の異常な変化)が発生します。

従来の「形だけを見る鑑定」では、精巧に描かれた偽造サイン(きれいな地図)に騙されてしまうことがありました。

しかし、微分を用いて「ペンの動きそのもの」を解析すれば、その線が「勢いよく書かれた本物」なのか、「おそるおそる描かれた偽物」なのかが、一発で数値として暴かれます。

AIが「動き」を復元する

私たちトラスト筆跡鑑定研究所が開発した「脳科学AI筆跡鑑定®」は、この微分の計算をAIに行わせることで、紙に残された静止画の文字から「書かれた瞬間の運動」を復元しています。

人間が目視で「なんとなく勢いがないな」と感じる曖昧な違和感を、AIは「微分値における加速度変化率に〇〇の差異がある」という客観的な数値(証拠)として算出します。

これが、私たちが「筆跡特徴(形)」だけでなく「状態(運動機能の表出)」の分析を徹底して行う理由であり、科学的な適格性を証明するための根拠でもあります。

まとめ

筆跡鑑定は、単なる「形合わせ」ではありません。 そこに残された「時間」と「運動」を、科学の力で解き明かす作業です。

もし、重要な文書の真偽でお悩みなら、形だけでなく「動きの質」までを見抜くことができる、科学的な鑑定を選んでください。「似ている」という主観ではなく、「動かぬ証拠」をご提供します。

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