最近、大手ニュースサイトやポータルサイト(Exciteニュース等)で、「AI筆跡鑑定」や「最新の科学捜査」といった記事を見かけることが増えました。
「AIが自動で特徴を抽出」「ビッグデータ解析」……。 こうした言葉が並ぶと、依頼者様が「最新のテクノロジーなら間違いない」と感じるのは無理もありません。
しかし、ご注意ください。 これらの記事の多くは、第三者の記者が取材したニュースではなく、企業が自ら発信した「広告(プレスリリース)」が自動転載されたものです。
では、その「広告の内容」と「実際の商品(鑑定書)」は一致しているのでしょうか? 当職は、当該企業(法科学鑑定研究所)の2025年(令和7年)作成の実際の鑑定書を入手し、その技術的実態を検証しました。
そこで明らかになったのは、PR記事のイメージとはかけ離れた、あまりにアナログな実態でした。
1. 「AIが自動抽出」という幻想 vs 「手動測定」という現実
【PR記事の主張(2024年発表)】 業界大手の法科学鑑定研究所(東京都小金井市)が出したプレスリリースには、以下のように書かれています。
「AIを活用して筆跡の特徴を自動的に抽出し、高精度な鑑定の実現を目指します」 「高度なパターン認識アルゴリズムを使用」
▼ PR記事の記述(2024年)

出典:法科学鑑定研究所 プレスリリース(2024年7月30日)より
これを読めば、ディープラーニング等のAIが画像から瞬時に特徴を読み取ると思うでしょう。
【実際の鑑定書の実態(2025年提出)】 しかし、その約1年後に裁判所に提出された同研究所の鑑定書の「解析手法」の欄には、こう記されていました。
「筆跡の筆導入部(始筆部)、運筆方向変化部(筆転折部)、筆止め部(終筆部)の中から2点を…(中略)…その他の始筆部、筆転折部、終筆部を二次元の座標点(測定点)(x,y座標)として測定する」
▼ 実際の鑑定書の記述(2025年)

出典:法科学鑑定研究所作成 筆跡鑑定書(令和7年5月26日付)より抜粋
ここにあるのはAIによる自動抽出ではありません。 人間が目視で「ここがハネの先端だ」と決め、定規やツールで「手動で点を打って測定(座標読取法)」しているのです。 これを「AIによる自動抽出」と呼ぶのは、技術的に大きな矛盾があります。
2. 「ビッグデータ」の正体は、ただの「Excel」?
【PR記事の主張】
「大量の筆跡データを統計的に解析」
【実際の鑑定書の実態】 実際に使用された解析ツールとして明記されていたのは、以下のソフトでした。
「相関分析及び回帰分析は Microsoft社の Excel 365を使用した」 「クラスター分析及び主成分分析の計算は市販の Pirouette 4.5を…使用した」
▼ 実際の鑑定書の使用ソフト欄

出典:法科学鑑定研究所作成 筆跡鑑定書(令和7年5月26日付)より抜粋
「Excel」は表計算ソフトであり、「Pirouette」は古くからある統計解析ソフトです。 また、比較対象とされたデータも、その事件に関わる数点の資料のみであり、世の中の「ビッグデータ」と照合している形跡はどこにもありませんでした。 Excelで数値を計算することを、現代では「AI」とは呼びません。それは単なる「統計計算」です。
3. 「最新技術」なのに、参考文献は昭和?
さらに驚くべきは、鑑定の根拠となる「参考文献リスト」です。 「最新技術」を謳う鑑定書の末尾に並んでいたのは……
- 1983年発行の書籍
- 1980年代~1990年代の論文
▼ 実際の鑑定書の参考文献欄

出典:法科学鑑定研究所作成 筆跡鑑定書(令和7年5月26日付)より抜粋
2026年の現在、生成AIやニューラルネットワークが常識となっている時代に、40年前の理論を「最新」として売る。 これは、裁判所に対しても、依頼者に対しても、誠実な姿勢とは言えません。
4. 結論:バズワードに踊らされないでください
私たちBSHAM™(脳科学AI 筆跡鑑定®)が、なぜ独自の理論をブログで公開し続けているのか。 それは、こうした「ブラックボックス化した権威主義」や「優良誤認を招くPR」と決別するためです。
私たちは、ごまかしの「AI用語」は使いません。 どのようなロジックで、脳のどの部分(線条体など)の働きを解析しているのか、その全てをオープンにしています。
これから筆跡鑑定を依頼しようとしている皆様。 ニュースサイトの派手な見出しや、「研究所」という名前に惑わされないでください。
「そのAIは、具体的に何をしているのですか?」 「実際の鑑定書では、どのようなソフトを使っていますか?」
そう問いかけてみてください。 本物の科学なら、明確に答えられるはずです。



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