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筆跡鑑定についてインターネットで検索すると、鑑定の方法として決まって次のような解説が表示されます。
「伝統的方法:目視で約50項目を分析」
これを見た一般の方は、「なるほど、50箇所も細かくチェックするなら信頼できそうだ」と感じるかもしれません。しかし、脳科学的筆跡鑑定法(BSHAM™)の開発者として、私は断言します。
その「50項目」に、科学的な根拠(エビデンス)はありません。
単に「ハネが似ている」「行が右上がりだ」といった主観的な印象を50個並べたところで、それは「感想文」の延長に過ぎず、現代の裁判で求められる「科学的適格性(Admissibility)」を満たす証拠にはなり得ないのです。
今回は、旧来の「目視鑑定」と、私が提唱する「BSHAM™(脳科学AI筆跡鑑定®)」が決定的にどう違うのか、その核心をお話しします。
「似ているか否か」ではなく「確率」を問う
従来の鑑定人が行う「50項目のチェック」は、いわば「点数合わせ」です。
「ここも似ている、あそこも似ている。だから同一人だ」という足し算の論理です。
しかし、筆跡は体調や気分、環境によって変化します。たまたま似ることもあれば、本人が書いても似ないこともあります。この「変動幅(Intra-writer Variability)」を無視して、「似ているから犯人だ」と決めつけるのは冤罪の温床です。
BSHAM™のアプローチは根本的に異なります。
「似ているかどうか」ではなく、「その筆跡が他人の手によって偶然生じる確率はどれくらいか」を、ラプラスの継起則などの確率論を用いて解析します。
以下の比較表をご覧ください。
【比較検証】伝統的「目視50項目」vs BSHAM™
| 比較要素 | 伝統的・旧来の筆跡鑑定 | BSHAM™(脳科学AI筆跡鑑定®) |
| 判定基準 | 「似ているか、似ていないか」 (鑑定人の経験則と勘に依存) | 「その筆跡が生じる確率は?」 (確率論的解析と数値化) |
| 分析手法 | 肉眼、拡大鏡による目視 | マイクロスコープ、画像解析、座標計測 |
| 証拠能力 | 低い(主観的意見) 「私の目にはこう見える」レベル | 高い(科学的適格性) 第三者が再検証可能な客観データ |
| バイアス | 「依頼者の有利にしたい」という 心理が働きやすい | AIによる「批判的監査」で 追従性バイアスを強制排除 |
鑑定における「4つの必須条件」
また、検索結果の解説には書かれていない、しかし鑑定において最も重要な前提条件があります。
私はこれを、鑑定の対象資料分析における「4点セット」と定義し、これを明記しない鑑定書は無効であると考えています。
- 時間的乖離: 資料の日付がどれくらい離れているか
- 筆跡特徴と状態: 筆記具、保存状態、執筆時の運動機能(高齢、病気など)
- 書式: 縦書きか、横書きか、罫線はあるか
- 書体: 楷書か、行書か
例えば、10年前の元気な時に万年筆で書いた「縦書きの署名」と、病床で震える手でボールペンで書いた「横書きのメモ」。これらを並べて「字の形が違うから別人だ」と判定することに何の意味があるでしょうか?
BSHAM™では、「最も日付が近く、書式・書体が一致する資料」を最重要のベースライン(Primary Evidence)として扱い、それ以外を排除、あるいは補強証拠として厳密に区分けします。この論理構成がない鑑定書は、ただの「こじつけ」です。
AIを「監査役」として使う理由
私の研究所では、生成AIを単なる「文章作成ツール」としては使いません。
AIに対し、「あなたはこの鑑定書を厳しく審査する監査役(あるいは反対尋問を行う弁護士)である」という役割を強制的に付与しています。
これにより、鑑定人の論理に「飛躍」はないか、「証拠の不足」はないか、「確率の過大評価」はないかを徹底的に批判させます。
自分に都合の良い結果だけを出そうとする「確証バイアス」を排除し、客観性を極限まで高めるためです。
結論:主観から科学へ
「目視で50項目分析しました」という言葉に惑わされないでください。
重要なのは項目の数ではなく、その分析が「科学的な再現性」と「論理的な整合性」を持っているかどうかです。
真実を明らかにするためには、経験則という名の「勘」ではなく、脳科学とデータに基づいた解析が必要です。それが、BSHAM™が目指す「正義」の形です。


