インターネットで「筆跡鑑定」と検索すると、上位に表示される情報の中には、残念ながら科学的根拠に乏しい「大嘘」が含まれていることがあります。私たちは、そうした誤った情報が原因で、多くの方が不利益を被る現状に危機感を抱いています。
ここでは、巷で語られる筆跡鑑定の「常識」がいかに危険なものか、その根拠を分かりやすくご説明します。
その1:「筆跡の個人内変動を分析する科学的な鑑定」は本当か?
この点については詳細な説明を割愛しますが、「筆跡には個人差があり、その変動を分析することで科学的に鑑定できる」という認識は、しばしも誤解を招く表現です。筆跡の個人内変動をどのように捉え、科学的に分析するのか、その具体的な方法が問われるべきだと私たちは考えます。
その2:「配置・筆圧・筆順・偽筆の4つに注意して鑑定を進める」は本当か?
この言葉自体は一見正しいように思えますが、実は「筆圧」と「偽筆」に関しては大きな落とし穴があります。
筆圧で筆者識別はできません
筆跡鑑定において、「筆圧」で個人を特定することは、ほぼ不可能です。
- 筆圧は多種多様に変化する: たとえば「一」という一文字だけでも、書き始め(起筆部)、途中(送筆部)、終わり(終筆部)で筆圧は異なります。さらに、書く人の体調、心理状態、使っているペン(ボールペン、鉛筆など)、書く姿勢など、様々な要因で筆圧は常に変化します。
- 比較が不可能に近い: 漢字一文字の中には数十ヶ所、画数の多い文字では100ヶ所以上の筆圧ポイントがあります。これを網羅的に比較するには膨大な労力が必要であり、何より「どの箇所の筆圧を比較すれば良いのか」という基準自体が曖昧です。
- 統計的データがない: ある筆圧が「一般的なのか」「非常に珍しいのか」を判断するためには、膨大な筆圧の統計データ(データベース)が必要です。しかし、そのようなデータベースは存在しません。
筆圧から分かることは、ごく限定的です。例えば、高齢で体力が衰えた方の筆跡が弱々しい場合や、文字を「払う」動きで筆圧が薄くなることで「止める」動きと区別できる程度です。「筆圧」だけで筆者識別を行う鑑定は、極めて危険な判断と言えるでしょう。
「偽筆」の判断も簡単ではありません
「偽筆(ぎひつ)」とは、他人の筆跡を真似て書かれた筆跡のことです。一般的には「偽筆だと、書字スピードが遅くなり、線が揺れたり、線に張りがなくなる。また、途中でペンを離す(筆継ぎ)や書き足し(加筆)などの不自然な点が見られるから判断できる」と言われることがあります。
しかし、これは大きな誤解です。
- 巧妙な偽造筆跡は多数存在する: 世の中には、非常に巧妙に他人の筆跡を真似ることができる人がたくさんいます。そうした偽造筆跡には、上記のような「線の揺れ」や「不自然な筆使い」はほとんど見られません。
- 総合的な判断が必要: 偽造かどうかを判断するには、「画線の揺れ」といった単純な特徴だけで判断することはできません。多数の筆者の**「書き癖」を詳細に比較・分析し、その総合的な結果として最終的に判断**されるべきものです。
安易に「偽筆」と判断する鑑定は、間違った結論を導き出す可能性を秘めています。
その3:「記載時期は10年まで鑑定が可能」は本当か?
この点も、以前のブログ記事で詳しく解説している通り、科学的な根拠に基づかない誤った情報です。これについては,当ブログ「知ったかぶりの鑑定人‥❺記載時期の乖離は10年以内という嘘」を参照してください。
なぜ、このような「大嘘」が広まるのか?
筆跡鑑定は、他の科学分野と異なり、大学に専門学部が存在せず、学問として確立されていません。唯一研究を行っているとされる科学警察研究所も、残念ながらその実態は十分とは言えません。
そのため、筆跡鑑定の世界には、科学的根拠が乏しい「定説」や「常識」が多く存在しています。私たちが長年の研究と検証を重ねて「正しい」と確信する理論が、インターネット上では、多くの鑑定人が書いた「間違った通説」に埋もれてしまう現状があります。
私は、他社を誹謗中傷したいわけではありません。ただ純粋に、現在の筆跡鑑定の多くが非常に危険な状態にあることを、皆さんに知っていただきたいのです。
信頼できる鑑定とは?
当研究所ではお客様に信頼できる筆跡鑑定を提供するため、徹底した研究と検証を重ねています。
- 豊富な実務経験: 筆跡鑑定に関する証人出廷数は8件と、この分野では最多クラスの実績があります。法廷で偽証罪に問われることなく、その証言は裁判所で認められています。
- 法律専門家からの支持: 150件以上の弁護士事務所を訪問し、私たちの鑑定理論を説明してきましたが、これまでに異論を述べた弁護士はいません。
- 科学的根拠に基づいた鑑定: 司法関係者からも支持される、根拠に基づいた鑑定手法を徹底しています。
根拠の曖昧な鑑定によって、多くの方が苦しむ現状を変えたい。その一心で、私たちはどんな非難にも屈せず、本当に困っている方を救うために、正しい筆跡鑑定の普及に努めてまいります。
ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。


