筆跡鑑定は「勘」じゃない!脳科学が解き明かす、文字の秘密

所長コラム

「筆跡鑑定」と聞くと、ベテラン鑑定士が虫眼鏡を片手に、長年の勘と経験で「これは本人だ」と見抜くイメージを持っていませんか?実は、現代の筆跡鑑定は、驚くほど科学的なアプローチを取り入れています。その鍵を握るのが、脳科学です。

一見、全く関係なさそうなこの2つの分野。しかし、文字を書くという行為の奥深さを知ることで、両者の意外な接点が見えてきます。

脳が覚える「手続き記憶」こそが、あなただけの書き癖を作る

人間が何かを学ぶとき、その記憶にはいくつかの種類があります。例えば、九九のように知識として覚える「意味記憶」や、昨日の夕食を思い出す「エピソード記憶」。そして、今回重要となるのが、「手続き記憶」です。

自転車の乗り方、楽器の演奏、そして、文字を書くこと。これらは、一度体が覚えると、意識しなくても自然とできるようになりますよね。この、体で覚えた技能や習慣に関する記憶が「手続き記憶」です。

文字を書くという行為は、単に文字の形を真似しているわけではありません。脳が複雑な手の動きを制御し、スムーズな運筆を可能にしています。特に、画数の多い日本語の漢字を書く際には、その運動プロセスはさらに複雑になります。

この複雑な運動の中に、実は一人ひとりの「個性」が生まれます。文字を書くときに無意識に出てしまう手の動きのクセ、つまり「書き癖」です。この書き癖は、まさしく「手続き記憶」として脳に刻まれた、あなただけの運動パターンなのです。

脳科学的アプローチで鑑定の精度が向上

従来の筆跡鑑定は、文字の「形」が似ているかどうかという点に注目することが主流でした。しかし、この方法では、意図的に筆跡を似せたり、逆に変えたりされると、鑑定が難しくなるという課題がありました。

そこで、脳科学の出番です。近年注目されている「脳科学的筆跡鑑定法」では、文字の「形」だけでなく、その背後にある「運動動作」に注目します。なぜなら、偽装しようと意識して文字を書くと、普段の無意識的な運動パターンとは異なる不自然な動きが出てくるからです。

このアプローチにより、従来の「勘と経験」に頼る鑑定ではなく、なぜその筆跡が本人のものなのか、あるいは偽造されたものなのかを、脳科学の概念を用いて論理的に説明できるようになりました。これは、筆跡鑑定の信頼性と客観性を飛躍的に高める画期的な進化です。

まとめ

  • 脳科学と筆跡鑑定は、「手続き記憶」という概念でつながっている。
  • 文字を書くときの「書き癖」は、脳に記憶されたあなただけの運動パターン。
  • 脳科学的筆跡鑑定は、文字の「形」ではなく「運動動作」に注目することで、鑑定の精度と客観性を高める。

筆跡鑑定は、もはや単なる鑑識技術ではありません。脳科学の知見を取り入れることで、文字に隠された個人の深層に迫る、非常に興味深い分野へと進化を遂げているのです。

脳科学的筆跡鑑定法の考案・提唱者は二瓶淳一です。

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